当館所蔵の資料を調査したが、「せんぺんばんか」の読みのみで、以前は「せんぺんばんげ」と読んだという記述は確認できなかった。以下の経過を報告した。
辞典類を調査
『日本国語大辞典 8 第二版』(小学館国語辞典編集部編 小学館 2001)
〈せんぺんばんか 千変万化〉の項に、次のような記述あり。
「本朝文粋(1600頃)には「千変万化」、太平記(14C後)には「千変万化(せんベンバンクヮ)」、清原国賢書写本荘子賞(1530)には「千変万化」、俳諧・三冊子(1702)には「千変万化」、浄瑠璃・国性爺合戦(1715)には「千ベンばんくは」、音訓新聞字引(1876)〈萩原乙彦〉には「千変万化」、星を造る人(1922)〈稲垣足穂〉、烈子-周穆王に引用あり。」
〈せんぺんばんけ 千変万化〉の項に、「(「け」は「化」の呉音)「せんぺんばんか(千変万化)」に同じ」と記述あり。
以下の辞典類には、〈せんぺんばんか〉の項はあるが〈せんぺんばんけ(げ)〉の項なし。
『言泉 日本大辞典 〔3〕』(落合直文著 芳賀矢一改修 日本図書センター 1981)大倉書店昭和6年刊の複製
『広辞苑 第6版』(新村出編 岩波書店 2008)
『広辞苑 第4版』(新村出編 岩波書店 1991)
『新明解国語辞典 大きな活字の 第5版』(金田一京助〔ほか〕編 三省堂 1997)
『三省堂現代新国語辞典 第4版』(市川孝編 見坊豪紀編 三省堂 2011)
『大辞林 第3版』(松村明編 三省堂編修所編 三省堂 2006)
『日本国語大辞典 12』(日本大辞典刊行会編集 小学館 1982)
『岩波新漢語辞典 第2版』(山口明穂編 竹田晃編 岩波書店 2000)
『大漢和辞典 巻2 修訂版』(諸橋轍次 大修館書店 1984)
『大修館四字熟語辞典』(田部井文雄編 大修館書店 2004) 出典は「千変万化、窮極すべからず」(列子、周穆王)とあり。
〈千変万化〉の出典「列子」を調査
以下の資料を確認したが、〈千変万化〉の読みの記載なし。
『漢文大系 13 列子』(富山房編輯部編輯 富山房 1975)
『中国古典新書 〔28〕 列子』(宇野精一 鈴木由次郎編 明徳出版社 1969)
『列子 上 岩波文庫』(小林勝人訳注 岩波書店 1987)
『列子 1 東洋文庫』(福永光司訳注 平凡社 1991)
『漢籍国字解全書 先哲遺著 9 老子 荘子 列子』(早稲田大学出版部 1910)
以下の3点には、〈千変万化〉の記載なし。
『中国古典名言集 6 講談社学術文庫』(諸橋轍次 講談社 1976)
『新・老子列子物語 中国古典物語 2』(稲田孝著 河出書房新社 1958)
『列子の研究 老荘思想研究序説』(小林勝人著 明治書院 1981)
インターネット情報
《国立国会図書館 デジタル化資料》を〈千変万化〉で検索した結果より
古い順にフリガナのあるものを確認したが、〈せんぺんばんけ〉〈せんぺんばんげ〉のフリガナは見あたらなかった。
「生徒の革提 : 訓蒙開智. 第2」( 岡安平九郎(蛍雪堂主人)著 成童館 1891)
5コマ目「目次:○千變萬化(せんぺんばんくわ)するも其分量に增減なきの譬」とあり。
「改良奇術」(松井昇陽斎著 青木嵩山堂 1905)
45コマ目「千變萬化(せんぺんばんくゎ)の傳」とあり。
「科学大系. 3(第11至14編)」(アーサ・トムソン 著[他] 大鐙閣 1923)
153コマ目「哺乳類の世界は千變萬化(せんぺんばんくわ)を極めてゐる」とあり。
《国立国会図書館 デジタル化資料》で〈列子〉で検索した結果より
「経書大講. 10 列子下 莊子上」(小林一郎著 平凡社 1940)
7コマ目「千變萬化(せんぺんばんくわ)して窮極す可からず」とあり。
「列子. 上(世界文庫 第25,26)」(坂本健一訳 世界文庫刊行会 1924)
46コマ目「その千變萬化は窮極すべからずだ」とあり。読みなし。
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