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江戸時代の地図に描かれている一宮玉前神社の北、本納の東側にある「白鳥沼」はどこにあったのか知りたい。 (千葉県立中央図書館)

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地名辞典や地図類を調べましたが、白鳥沼の位置を特定できる資料は確認できませんでした。 江戸時代の地図には、「白鳥」、「白鳥沼」等の地名が複数の資料に掲載されていました。 今回確認した資料(回答プロセス参照)のうち、「白鳥」の地名が出てくる最も古い地図は、長久保赤水の「日本輿地路程全図」安永7年(1779)以前のもの、「白鳥沼」の地名が出てくる最も古い地図は、文政11(1828)年発行の「国郡全図」です。「白鳥」、「白鳥沼」が出てくる一番新しい地図は、『銅鐫大日本國細圖』元治2(1865)でした。 地図や年代によって記述にゆれがありますが、「白鳥」、「白鳥沼」は長柄郡あたりの位置に描かれています。 今回確認した複数の地図では、本納(ホンノフ)をホシノフ、帆丘を帆立とする誤記や、本納の旧地名である帆丘を、独立した地名として本納と併記している例があり、記載されている地名がすべて実在のものかどうかはわかりません。 幕末の地図には、「白鳥」、「白鳥沼」等の地名がない地図も存在しており、同時代で「白鳥沼」の地名があるものとないものが混在しています。 『明治十三年~十九年迅速測図二万分之一』の該当地域、「茂原町」、「古所村」、「長者町」、「苅谷村」には「白鳥沼」の地名は確認できません。 地名辞典や郡誌類には「白鳥」、「白鳥沼」についての記載は確認できませんでした。  その他、伝説関係の資料には、「白鳥沼」関連の記述がありました。 1.『日本伝承民俗童話全集1』には、p236「白鳥沼(しらとりぬま)」が千葉の伝説として収録されています。  主人公は少年長柄男(ながらお)で、帆立森、玉前神社の境内の井戸、東浪見浦などが登場し、玉前神社の「井戸のそこが、一方は白鳥沼、一方は東浪見浦にぬけている」と書かれていますが、白鳥沼の具体的な位置については触れていません。  解説で、白鳥沼の伝承童話は日本武尊の白鳥伝説が結びついたものだとしています。 【資料1】 2.『房総の伝説』p46「白鳥の井戸」では、玉崎神社の井戸について、「この井戸は太東岬にある白鳥の沼に通じているといわれる」と書かれています。 【資料2】 3.『ふるさと』p60「神泉白鳥の井戸」でも同じ伝説が挙げられ、「この井戸は太東岬の湖につながる」との記述がありました。白鳥沼の地名は出てきません。 【資料3】 4.『茂原市の地名と伝説』p215「白鳥伝説」では、「白鳥沼」の地名はありませんが、次の記述がありました。 「本納の東の海を「玉の浦」といい、海と陸との間の土地は「葦の浦」といった。この葦の浦に、毎年春になると二羽の白鳥が飛んで来て、岸辺を静かに泳いでいた。この白鳥は、日本武尊と弟橘媛の化身であると村人はいっていた」  また、日本武尊を祀る本納の橘神社では、白鳥を追う鷹を禁鳥とし、東金を鷹狩りの拠点とした徳川家康以下歴代将軍も、橘神社にだけは決して入らなかったとのエピソードも記されています。 【資料4】 回答プロセス:①地名辞典や郡誌類を探すが、「白鳥沼」の記述なし。 ②地図類を確認する。 ③NDLサーチで「白鳥沼」検索したところ、伝説がヒット。伝説類を探す 「白鳥」、「白鳥沼」掲載地図・地誌の確認。 1.『日本古地図集成』(鹿島研究所出版会 1971)  【資料5】   ・51「日本輿地路程全図」安永7年(1779)以前・〔長久保赤水作〕「白鳥」の文字有。   ・54「改正日本輿地路程全図」安永8年(1780)長久保赤水作 印刷不鮮明のため、神戸大学附属図書館「住田文庫」所蔵の安永4年(1775)の地図で確認。  http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/sumita/00025412/ 「白鳥」の文字 古典籍総合データベース(早稲田大学)を「「改正日本輿地路程全図」で検索4件ヒット http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/search.php  ・弘化元[1844]白鳥沼 ・弘化3[1846] 白鳥(もう1件の弘化3年地図は不鮮明で確認できず)  ・寛政3[1791]白鳥あり。   ・59「重鐫日本輿地全図」天明3年(1783)「白トリ」の文字あり。   ・55「浅野弥兵衛版改正日本図」文化8年(1811)「白トリ」の文字あり。   ・56「大日本細見指掌全図」文化5(1808)水色の囲いの中に「白嶋」の文字あり。  印刷不鮮明のため、「早稲田大学古典籍総合データベース」で確認。 http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/ru11/ru11_00873/index.html    ・57「大日本改正全図」文化8年(1811)三木光斎作 「白トリ」の文字あり。   ・58「大日本接壌三国之全図」(文化13(1816))「白トリ」の文字あり。 2.『文政年間国郡全図 復刻』(近藤出版社 1986 原版:天保8(1837)年)  【資料6】   P73上総国に「白鳥沼」あり。 国会デジタル化資料「国郡全図 2巻〔1〕」34/59コマ 文政11(1828)でも確認。 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2555430 3.『皇国総海岸図 絵図篇 第三巻』(昭和礼文社 1988 原本:安政2(1855)年)  【資料7】   長柄郡に「白鳥新田村々」あり。 4.『皇国郡名志』(桂華園福井守光編 天保14(1843) 静好堂)  上総国長柄の項に「白鳥沼」あり。 東京学芸大学リポジトリでデジタル画像が公開されています。(上総国20/67表示)   http://ir.u-gakugei.ac.jp/handle/2309/8060 5.『大日本輿地便覧』天保5(1834)岐阜大学機関リポジトリ 「白鳥沼」あり。 http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/31361 6.『銅鐫大日本國細圖』元治2(1865)筑波大学附属図書館 貴重書コレクション古地図 (筑波大所蔵地図は出版年不明)「白鳥沼」あり。 http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/pub/kaken/H18_map/10076904318/normal/10076904318 _034.html   上記の資料のうち2、4、5、6には「白鳥沼」、「ホシノフ」、「帆立」などの地名があるが、郡誌や地名辞典等では「白鳥沼」、「ホシノフ」、「帆立」いずれも確認できない。 「ホシノフ」は本納(ホンノフ)の誤記、「帆立」は本納の旧地名「帆丘」の誤記と思われる。また、本納と帆丘が別地名として併記されている地図については、既存の地図類を精査せず参照したものか。 以下の地図には「白鳥沼」掲載なし。 ・迅速測図 ・1/25000地形図 ・『千葉県管内実測全図』(1885、1887) ・『上総国輿地全図』(嘉永2(1849)) ・『上総国九郡細見絵図』(江戸末期) ・『上総国図』(文化5(1868)) ・「元治新版大日本道中細見記」元治元(1864)年(『日本の古地図』(南波松太郎他編 創元社 1969 p69) ・『江戸時代日本国絵図選要』(人文社 1978) 「富士見十三州輿地之図」天保14(1843)年 筑波大学附属図書館 貴重書コレクション古地図にも同一地図あり http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/pub/kaken/kaken16-map/lime/10076904196.html 以下の資料には「白鳥沼」の記述なし。 ・『角川日本地名大辞典 12 千葉県』(角川書店 1984) ・『千葉県夷隅郡誌』(夷隅郡役所 大正12発行の復刻) ・『長生郡郷土誌』(長生郡教育会編 大正2復刻 崙書房 1976) ・『長生村史』(長生村 1960) ・『長生郷土漫録』(大成会 1953) ・『長生村風土記 明治・大正編』(長生村 1980) ・『長生村地名物語』(長生村教育委員会 1985) ・『一宮町史』(一宮町役場 1964) ・『白子町史』(千葉県長生郡白子町 1965) ・『白子風土記』(白子町 1989) ・『千葉県史料 近代篇明治初期ニ』(千葉県 1969) p361「日本地誌提要 巻之二十」上総国湖沼の項 鳥喰池(武射郡)のみ。  ・『千葉県の自然誌 本編』(千葉県 1996) ・『湖沼調査報告書』(千葉県 1980)    面積1ha以上の天然湖沼39のうち、旧長柄郡所在で玉前神社より北にあるものは、白子町「池」(名称不明)、長生村「鵜沼堰」、同「尼ケ台堰」のみ。 (インターネットの最終アクセス:2013年3月1日) 参考資料:【資料1】 『日本伝承民俗童話全集1』(藤澤衛彦 河出書房 1953)|9600359007;, 参考資料:【資料2】 『房総の伝説』(平野馨編 第一法規 1976)|9200294340;, 参考資料:【資料3】 『ふるさと』(上総一宮郷土史研究会 1981)|9200325367;, 参考資料:【資料4】 『茂原市の地名と伝説』(星野正著・発行 1989)|9200307270;, 参考資料:【資料5】 『日本古地図集成』(鹿島研究所出版会 1971)|9102059060;, 参考資料:【資料6】 『文政年間国郡全図 復刻』(近藤出版社 1986)|9102059131;, 参考資料:【資料7】 『皇国総海岸図 絵図篇 第三巻』(昭和礼文社 1988)|9102060562; ,

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