調査プロセスを説明し、以下の資料を提供。
・2つの書簡の英訳が掲載されている資料として
『Karl Marx, Frederick Engels : collected works New York : International Publishers , 1975-2004』
・マルクスのテキストの電子化データベースとして<Marx/Engels Library>(http://www.marxists.org/archive/marx/index.htm )。
ちなみに、このウェブサイトは、東京大学の<学術情報インデックス>で見つけたので、それも紹介。
・『Karl Marx, Friedrich Engels Briefwechsel May 1846 BIS DEZEMBER 1848』
・大月書店の『マルクス・エンゲルス全集』別冊2『書簡索引』
回答プロセス:<調査方針>
まず、依頼者が持ってきた典拠資料を見せてもらう。勉強会だろうか、いくつかの項目があり、
その中に「『アンネコフへの手紙』をドイツ語・フランス語で読む」とだけある。
この文面からは「『アンネコフへの手紙』にはドイツ語版とフランス語版があるように読めるが…。
まずは、『アンネコフへの手紙』の日本語訳を見つけ、そこから原書情報を得るのが定石だろう。
<調査プロセス>
①マルクスといえば大月書店なので、大月書店の『マルクス・エンゲルス全集』別冊2『書簡索引』
を書庫から持ってきて「受取人別書簡目録」で“アンネコフ”を引くと以下の掲載情報が得られた。
1 M 〔1846〕 12月28日 1641
2 M 〔1847〕 12月9日 1649
※Mは差出人がマルクスの意味。次が年月日。年月日の次の数字は、『書簡索引』中の「第三者への
書簡目録」において各書簡の冒頭に付されている書簡番号を意味する。
②以上の調査から、マルクスからアンネコフに 宛てた手紙は少なくとも2通存在することが分かった。
これはレファレンスインタヴューの段階では不明であった事実だし、依頼者も知らない情報。
調査対象が少しだけ広がった。
③以上の結果を元に「第三者への書簡目録」の“1641”と“1649”を見ると以下の情報が得られた。
・1641 M パヴェル・ヴァシレヴィッチ・アンネコフ(在パリ)へ
〔1846〕12月28日、ブリュッセル(フランス語) 27巻 388頁
・1649 M パヴェル・ヴァシレヴィッチ・アンネコフ(在パリ)へ
〔1847〕12月9日 、ロンドン 27巻 406頁
④以上の結果から、大月書店『マルクス・エンゲルス全集』第27巻の388ページと406ページに該当
する書簡が収録されていることがわかる。
ちなみに1846年の書簡は原文はフランス語で書かれたもの。
書簡の追伸で以下のようにマルクスが書いている。
「なぜ私が上手なドイツ語でなく、下手なフランス語で書くのか、疑問に思われるでしょうか?
それは私がフランスの著者を問題にしているからです。
あなたのお返事があまりおくれないで、この文法無視のフランス語でも私のいうことが理解して
いただけたかどうかわかれば、たいへんありがたく存じます」
⑤さて、いよいよドイツ語版とフランス語版の調査に移る。
大月書店『マルクス・エンゲルス全集』第27巻の凡例を読むと、この全集は、『Karl Marx-Friedrich
Engels : Werke,Band 27,Institut fur Marxismus-Leninismusu beim ZK der SED ,
Dietz Verlag , Berlin, 3 , Auflage 1970』
の翻訳であることがわかります。
但し、この全集は神大に所蔵がない?もよう。
⑥その他の資料を探してみると、
『Karl Marx, Frederick Engels : collected works New York : International Publishers ,
1975-2004』(請求記号:A309.3-38-378)に2通の書簡の英訳が掲載されていた。
ちなみに、マルクスともなると電子テキスト化も進んでおり以下のWebサイトからも入手可能
<Marx/Engels Library>
http://www.marxists.org/archive/marx/works/
・『Letter from Marx to Pavel Vasilyevich Annenkov』 1846 in Paris
http://www.marxists.org/archive/marx/works/1846/letters/46_12_28.htm
・『Marx To Pavel Vasilyevich Annenkov In Paris』
http://www.marxists.org/archive/marx/works/1847/letters/47_12_09.htm
⑦『Karl Marx-Friedrich Engels : Werke』以外にフランス語とドイツ語で掲載されている資料を調査したところ、
『Karl Marx, Friedrich Engels Gesamtausgabe (MEGA) 』の『Karl Marx, Friedrich Engels
Briefwechsel May 1846 BIS DEZEMBER 1848』に求める書簡が収録されていた。
但し、注意が必要なのは、英語標記では“Pavel Vasilyevich Annenkov”とされていたものが、
この全集では“Pawel Wassilijewitshch Annenkow”となっている。
ただし、郵送年月日は完全に一致しており、内容も斜め読みした感じでは同じものと思われる。
そこは、依頼者自身に訳してもらい判断してもらうことにする。
参考資料:大月書店『マルクス・エンゲルス全集』, (『Karl Marx-Friedrich Engels :Werke,Band 27,Institut fur Marxismus-Leninismusu beim ZK der SED , Dietz Verlag , Berlin, 3 , Auflage 1970』)
参考資料:マルクスからパヴェル・ヴァシレヴィッチ・アンネンコフへ, (『Karl Marx, Frederick Engels
: collected works New York :International publishers , 1975-2004』)
備考:■辞典、事典、辞書や全集、選集などは凡例から読む。選集などは選者の基準などを把握していおかないと、
存在する資料の確認に漏れがでる恐れがある。
■メジャーな思想家や文学者とものあると、様々な言語に翻訳がされているもの。
例えば今回の調査では、日本語の“全集”という言葉が各国語ではどう表現されるかを知っていれば、各国語
の“全集”という言葉と著者名の&検索で楽に検索できるはず。
・ドイツ語…gesammelte Werke 、Gesamtausgabe、
・フランス語…Les travaux complets、
・英語…collected works、complete works、Collection、corpus、
・中国語…全集
・イタリア語…lavori completi
■蛇足だが、今回の調査ではマルクス全集ということから“大月書店”というふうに考えたが、それぞれの分野ご
とに強みを持った書店の名前を知っておくのも必要だろう。例えば井上真琴さんの『図書館に訊け!』79頁以降
を参考にさせていただくと。以下のようになる。
・歴史…吉川弘文館、山川出版
・建築…王国社(王国“者”となっているが、誤字?)
・仏教…法蔵館
・工学…培風館・内田老鶴圃
・法律…有斐閣
あとは、YAHOOのディレクトリを活用しても傾向が把握できるかもしれない。
・Yahoo!>サービス一覧>楽しむ>本>カテゴリから探す
■世界各国の代表的な百科事典ついては、神戸大学付属図書館さん作成の資料を使わせていただいている。
『世界各国の百科事典』 http://www.lib.kobe-u.ac.jp/guidance/shiryo/hyakka-list.pdf
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