「化物語」本文では、正確には「土木関係の用語」ではなかったか、とされていたので当館所蔵の主な土木関係の用語辞典等を検索してみたが、見あたらなかった。
インターネット上の掲示板や個人のサイトでは、各種の説が見られるが、いずれも根拠は記載されておらず、掲示板等の発言者による造語かもしれない。
1 直木説について-土木・建築辞典等で用語として確認できない。
2 したぎ(下木)の江戸なまり説について-江戸なまりでは通常、「ひ」が発音できず「し」になる、とされる。例:火箸-しばし、火の出-しので、と発音。「し」が「ひ」になる、というのでは逆。
3 日田木説について スギは日田市の特産であることが確認できたが、日田木という名称はないか、あったとしても一般的とは思われない。
4 その他 ひたき(小鳥名)、ひたき(火焚)、ひたき(直黄)、直切り(ひたぎり)なども考えられますが、いずれも「ひたぎ」にはなりにくい。 また、火焚場(屋)となった場合をのぞいて土木関係とは言えない。
回答プロセスの調査経過を回答した。
回答プロセス:出典の確認
「化物語(ばけものがたり) 上(講談社BOX)」(西尾維新著 講談社 2006)
p13(羽川翼)「戦場ヶ原さんの下の名前って、ひたぎ、でしょう? そんな変ってるかな・・・ひたぎって、確か、土木関係の用語じゃなかったっけ」
辞書・事典
『日本国語大辞典』やR500-R520の主だった辞書事典を〈たぎ〉、〈ひたぐ〉などで引く。該当記載なし。
インターネット情報
《Google》を〈ひたぎ & 意味〉で検索する。化物語をめぐるネット上の噂話・解釈のみ。
掲示板や個人サイトに記載のあった説は以下のとおりである。※いずれも根拠はなく、個々人で考えた説のみ。
「直(ひた)+木」説 「まっすぐな木」 「じかに置く木=土台となる木」
「下(した)の江戸なまり+木」説 下木(したき、したぎ):木材の継手の下の奴。 まっすぐ(直)切る、という説も紹介している。
「直切り(ひたぎり)」説 めった切り・・・土木関係ではなく刀で切ること
《建築用語.net》(http://www.architectjiten.net/hi.html 2012/11/15 最終確認)ヒの項に該当の言葉なし。
確認した辞典類は以下のとおり。
【国語辞典】
いずれも「ひたぎ」(ひたぐ)の項目なし。
『日本国語大辞典』(日本大辞典刊行会編 小学館 1980)
似たもの項は以下のとおりである。
ひたき【翁+鳥】小鳥の名。元来はジョウビタキをさす。古く火焼鳥ともかいた。
ひたき【火焼・火焚・火炬】火を焚くこと、囲炉裏。
ひたき【直黄】一面に黄色なこと。歌では多く山吹の花をいい、また、火焼の意にかける。
ひたぎり【直切】切りまくること。めった切り。
ひた+木に該当しそうなものとしては以下のとおりである。
引板 (「ひきいた(引板)」の変化した語)田や畑にはりわたして鳥などを追うためのしかけ。鳴子。また、流れ落ちる水に板をあてて、音を鳴り響かせる装置のものをいう。
(出典:源氏物語-夕霧に鹿がひたの音に驚かない描写がでてくる)
日田(地名)大分県の都市名。
直(ひた) 直接であるさま。直に接しているさま。まっすぐ、純粋な、などの意。
『広辞苑(第三版)』(新村出編 岩波書店 1983) 上とほぼ同じ内容。
【漢和辞典】
『大漢和辞典』(諸橋轍次 大修館書店 1985) 巻8に「直」あり ひた、と読む事例なし。 直切(ちょくせつ)あり:正しくねんごろ
『新明解漢和辞典』(長沢規矩也〔ほか〕編 三省堂 1991)
『大漢語林』(鎌田正著 米山寅太郎著 大修館書店 1992)
【古語辞典】 ※ひたき(小鳥名) 及び 火焚き あり
『角川古語大辞典』(中村幸彦〔ほか〕編 角川書店 1999)
ひた(引板)あり。 「もとは流れ落ちる水にあてた板が鳴り響くようにした仕掛けであったと思われる」
『古語大辞典』(中田祝夫〔ほか〕編 小学館 1983)
ひたぎり(直切り) あり。
『新明解古語辞典』(金田一春彦,三省堂編修所編 三省堂 1979)
【民俗辞典】
『日本民俗学辞典』(中山太郎編 名著普及会 1980)
『綜合日本民俗語彙』(民俗学研究所編 平凡社 1977)
『日本民俗語大辞典』(石上堅著 桜楓社 1983)
『民俗の事典(民俗民芸双書 別巻)大間知篤三〔ほか〕編 岩崎美術社 1977)
『日本民俗大辞典』(福田アジオ〔ほか〕編 吉川弘文館 2000)
【工業辞典】
『工業材料大辞典』(工業調査会 1997)
『材料名の事典』(長崎誠三ほか編 アグネ技術センター 2005)
『JIS工業用語大辞典』(日本規格協会編 日本規格協会 2001)
『英和・和英工業技術用語集』(藤岡啓介編 日外アソシエーツ 1997)
【土木辞典】
『土木用語大辞典』(土木学会編 技報堂出版 1999)
『学術用語集』(土木工学編 文部省〔編〕 土木学会〔編〕 土木学会 1991)
『建設用語事典』(建設用語研究会編 ぎょうせい 1993)
『図解土木用語辞典』(土木用語辞典編集委員会編 日刊工業新聞社 1988)
『土木工学ハンドブック 2』(土木学会編 技報堂出版 1989)
『図説土木用語事典』(土木出版企画委員会編修 実教出版 2006)
『早引き土木現場用語辞典』(三浦裕二編著 ナツメ社 1999)
『新領域土木工学ハンドブック』(池田駿介〔ほか〕編 朝倉書店 2003)
『実用地盤・環境用語辞典』(小林康昭〔ほか〕著 山海堂 2004)
『図解土質・基礎用語集』(原田静男編著 東洋書店 1980)
『土質工学標準用語集』(土質工学会編集 土質工学会 1990)
『土木工法事典』(産業調査会事典出版センター 2001)
『図解土木施工用語集』(稲橋俊一編著 東洋書店 2000)
『新・土木施工管理用語辞典』(土木施工管理用語研究会編 山海堂 2004)
『建築・土木用語がわかる辞典』(長門昇著 日本実業出版社 1998)
『英和・和英建築・土木5万語中辞典学術用語・JIS用語に基づく インタープレス版』(インタープレス対訳センター編集 アルファベータ 1998)
『図解建築現場用語辞典』(渡辺光良〔ほか〕編著 ナツメ社 2005)
『測量用語辞典』(松井啓之輔編著 共立出版 1994)
『コンクリート技術用語辞典』(依田彰彦著 彰国社 2007)
『建築給排水設備便覧』(桜井省吾著 彰国社 1967)
【建築辞典】
『図説建築用語事典 五十嵐永吉著 堀越喜与志著 実教出版 2005)
『建築学小事典 嶋本恒雄編 相川三郎編 理工学社 1994)
『学術用語集 建築学編 文部省〔編〕 日本建築学会〔編〕 日本建築学会 1990)
『建築百科大事典』(産業調査会 1983)
『建築大辞典』(彰国社編 彰国社 1993)p1391 火焚祝い(ひたきいわい)・火焚屋あり
『建築用語辞典』(建築用語辞典編集委員会編 技報堂出版 1995)
『建築用語図解辞典』(橋場信雄著 理工学社 1979)
『建築学用語辞典』(日本建築学会編 岩波書店 1999)
『建築大百科事典』(長澤泰編 神田順編 朝倉書店 2008)
【民俗・木造建築辞典】
『図説民俗建築大事典』(日本民俗建築学会編 柏書房 2001)
『日本民家語彙解説辞典』(紀伊国屋書店 日本建築学会民家語彙集録部会編纂 1993)p637 火焚き、火焚祝い、火焚座
『古建築辞典』(武井豊治著 理工学社 1994)
『図説木造建築事典 基礎編・実例編』(木造建築研究フォラム・図説木造建築事典編集委員会編 学芸出版社 1995)
『木造建築用語辞典』(小林一元〔ほか〕著 井上書院 1997)
【林業辞典】
『林業百科事典』(日本林業技術協会編 丸善 1988)日田林業の項あり。名産品としてスギ
林業事典にあった、「日田」木説について
《Google》を〈日田 & 木材〉で検索。林業は日田市の主幹産業であることがわかる。(http://www.oita-press.co.jp/localNews/2012_132572430983.html 大分合同新聞 2012/11/15最終確認)
《Google》を〈"日田木"〉で検索。1850件 ほとんどが日田木協(日田木材協同組合)日田木青会(日田木材協同組合青壮年会)の略。
引板木説について
《Google》を〈"引板木"〉で検索。1件みつかるが該当なし。
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