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長唄「外記猿」という歌詞の中に「夜さの泊りは どこが泊りぞ 那波か名越か 室が泊りぞ」という一節がある。 そのうち「名越」が現在のどこに当たるのかを知りたい。(埼玉県立久喜図書館)

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質問に該当する「名越」という地名は見当たらなかったが、「名越」は「坂越」の誤りであるとする資料と「坂越」についての解説を紹介した。 1 「名越」を「坂越」の誤りとする資料 《国立国会図書館デジタルコレクション》  忍頂寺務「『保名』註釋」(『清元研究 1925年8月(2)』p5-22 大江戸芸術社 1925.8)(https://dl.ndl.go.jp/pid/1504492 国立国会図書館)7コマ-16コマ 国立国会図書館内/図書館・個人送信限定  p18(14コマ)「また長唄の『外記猿』にも大同小異の言葉があって、(後略)」「序(ついで)ながら長唄には『どこが泊りぞなばか名越か』とありますが、名越は播州の坂越の誤りである。」とあり。 【参考】以下は文政二年の狂言に使われた曲「三升猿曲舞」についての論考だが、この狂言から質問の歌詞に似たフレーズが引用されており「名越」ではなく「坂越」とあり。  金子千章著「猿舞考」(『三味線楽 1936年12月 5-12』p36-39 三味線文化譜樂會 1936.12)(https://dl.ndl.go.jp/pid/1478078 国立国会図書館)20コマ-21コマ 国立国会図書館内/図書館・個人送信限定 p38(21コマ)「(前略)是もやはり狂言の「夜さの泊りは、何處が泊りぞ、名波か坂越か、室が泊りよ(後略)」」とあり。 2 「坂越」について解説がある資料 『角川日本地名大辞典 28 兵庫県』(「角川日本地名大辞典」編纂委員会編纂 角川書店 1988)  p666-668「さこし 坂越」の項に「〈赤穂市〉千種川下流域、播磨灘に面する。」とあり。 『兵庫県大百科事典 上巻 あ-そ』(神戸新聞出版センター編集・制作 神戸新聞出版センター 1983)  p1084「坂越港」「坂越の町並み さこしのまちなみ」の項目あり。   「赤穂の城下町が形成される以前は、坂越がこの地方の中心で、古くから泊として栄えた。」   「町並みとしては千種川の東岸からの小さな坂を越えると、海岸まで」とあり。  巻頭「兵庫県全図」を見ると、海岸沿いに東から「室津港」、「相生港」※旧那波港、「坂越港」と港が並んでいる。 『日本歴史地名大系 29 2 兵庫県の地名 2』(平凡社 1999)館内利用  p717-718「坂越村 現:赤穂市坂越」の項あり。  p718-719「坂越庄」の項あり。 回答プロセス:1 自館目録を〈フルテキスト:外記猿〉〈タイトル:長唄〉〈坂越〉で検索する。 『長唄名曲要説』(浅川玉兎著 日本音楽社 1986) p170-173「外記猿」の項あり。概要、歌詞評釈、曲節の研究について記載あり。  p171の歌詞評釈のなかに「「那波・名越・室」いづれも播磨国の地名。」とあり。 2 参考図書にあたる。 『日本音曲全集 第1巻』(中内蝶二[ほか]編 緑蔭書房 1987)  p271-274「外記猿(外記節猿)」歌詞と語釈、解説あり。       「那波 なば」播摩国にあり、「名越 なごし」同上、「室 むろ」播磨の室の津 3 〈播磨国〉をキーワードに地名を探す。 (1) 図書 『風土記 常陸国・出雲国・播磨国・豊後国・肥前国』(沖森卓也編著,佐藤信編著,矢嶋泉編著 山川出版社 2016)  p253-258「播磨国風土記」  p275に「息長帯日売命(おきながのたらしひめのみこと)、御船(みふね)を宿(は)てたまひし泊(とまり)なり。故(かれ)、御津(みつ)と号(なづ)く。室原泊(むろはらのとまり)。室(むろ)と号(なづ)くる所以(ゆえ)は、此(こ)の泊(とまり)、風の防(ふせ)くこと室の如し。故、因りて名とす。」  地名索引に「那波」「名越」はなし (2) データベース  《Japan Knowledge》(ネットアドバンス)を〈播磨の国〉で検索する。   「デジタル大辞泉」の「播磨」(はりま)の項   「旧国名の一。山陽道に属し、現在の兵庫県の西南部。播州(ばんしゅう)。」 4 兵庫県の地名辞典を確認する。   5 《国立国会図書館デジタルコレクション》(https://dl.ndl.go.jp/ 国立国会図書館)を〈外記猿 & 名越〉〈坂越 & 名越〉〈坂越 & 名越 & 誤〉〈坂越 & 外記猿〉で検索する。   6 《Google》(http://www.google.co.jp/ Google)を〈坂越 & 名越〉〈坂越 & 外記猿〉で検索する。 〈その他調査済資料〉 『長唄を読む 3(江戸時代(後期)~現代編)』(西園寺由利著 改訂版 小学館スクウェア 2014)  p30-33「外記節「外記猿」」の項あり。 『長唄名曲要説』(浅川玉兎著 日本音楽社 1986)  p170-173「外記猿」の項あり。  p171の歌詞評釈のなかに「「那波・名越・室」いづれも播磨国の地名。」とあり。 『江戸歌舞伎長唄成立史』(漆﨑まり著,原道生監修 八木書店古書出版部 八木書店(発売) 2019) 『邦楽百科辞典 雅楽から民謡まで』(浅香淳編 音楽之友社 1984)  p350「げきざる 外記猿」 『日本音曲全集 第1巻』(中内蝶二、田村西男編 緑蔭書房 1987)  p271-274「外記猿(外記節猿)」歌詞と語釈、解説あり。    「那波 なば」播磨国にあり、「名越 なごし」同上、「室 むろ」播磨の室の津 とあり。 『江戸風俗図誌 第7巻 江戸音曲事典』(展望社 1979) ウェブサイト・データベースの最終アクセス日は2024年2月17日。 事前調査事項:インターネットで「名越」を検索したが、ヒットするのは神奈川県鎌倉市の地名ばかりで全く手がかりがない。 「那波」は兵庫県相生市、「室」は同県たつの市にある地名だと分かっていて、恐らく両者に近い場所の地名だと思われる。

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