『日本随筆大成 第3期 第5巻』(日本随筆大成編輯部/編 吉川弘文館 1995.8) に『浪花の風』が収録されており、質問の部分は、P396に掲載されている。
「食物江戸より風味の勝りたるものもあれども、また江戸人の口には適し難く、且敵ひ難き計にもあらず、風味の劣りしものも少からず。其内蕎麦切は殊にあしく、其色合もあかみを帯て味ひ宜しからず。只他の加入もの多き故にはあらず。真の生蕎麦にても一体の性合よろしからざる故、風味劣れるなり。其上製法もよろしからず。旁江戸人の口には敵ひ難し。これ蕎麦は土地の性に応ぜざる故なるべし。
温飩は蕎麦に引替、大によろし。其色合も雪白にして味ひ甘美なり。夫故市中にも温飩店は多く、いづれの店物にても皆よろし。予は蕎麦はそもそも嗜好なれども、温飩は素より好まず。されども当地のうどんは、江戸に比すれば格別よろしき故、蕎麦に替て不断食することなり。」
≪参考≫
『関西と関東』(宮本又次/著 青蛙房 1966.10)では、P155-163において「七 関西のうどんと関東のそば」「八 更科・藪そば・砂場のそばや」「九 江戸のそば・大阪のそば」「十 大阪の<うどんや>」という項目をたて、上述の久須美祐雋の文章を引用したうえで、江戸と大阪(上方)のうどん文化、そば文化について言及している。
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