1. 船場言葉の用例、会話文例が掲載されているもの
・『方言と大阪』猪飼九兵衛著 梅田書房 1948
※衣、季節など項目ごとに、ことばと意味を掲載。用例が書かれているものもある。“まへがき”に、「古き大阪のすがた、船場や町々の方言を恋ふるのあまり、こゝに書き留めて」とあり、収録されているのは基本的に船場言葉と考えていいと思われる。
p214~230に「結びに代へて」として、「或るひる前のひとゝき」、「あるひる后の一とき」、「ある日の暮れがた」として、会話文例と思しきものも収録している。
・『定本船場ものがたり』香村菊雄著 創元社 1986.11
※「船場ものがたり」(神戸新聞出版センター 1976年刊の改題改訂)
p54~62 船場ことば私見
p63~73 船場ことばの解説 いいまわしなど発音記号つきの解説
p74~82 船場の家族とその呼び方 奉公人からの家族の呼び方発音記号つきの解説
p83~85 人の名を呼ぶとき 「はん」と「さん」の使い分け、「どん」「とん」発音記号つきの解説
p86~87 「わて」と「うち」と「へえ」 自分の呼び方、返事について発音記号つきの解説
p88~92 ことばのユーモア 浪花しゃれことば集
p93~102 船場ことばの実例集
・『大阪方言辞典』牧村史陽編 杉本書店 1956
※辞典部分のほか、大阪のシャレ言葉、いろはたとへ、明治時代の看板など。地名・民俗・行事から検索できる索引あり。
・『全国方言資料 第4巻 近畿』日本放送協会編 日本放送出版協会 1972
大阪 p189~227
※中船場出身の牧村史陽氏と入江ゆき氏の会話を収録。自由会話として、年末年始の話、天神祭の話、あいさつなどを掲載。
・『京ことば大阪ことば』大阪読売新聞社編 浪速社 1965
船場のプライド p43~45
※楳垣実氏が船場ことばを文字に残すため取材し、明治21年生まれの婦人が女同士の会話例として聞かせたものの記録を引用。(「辞するときのあいさつ」客と主婦の会話文)
・『学大国文 17号』1973.11
大阪船場のあいさつことば(佐藤虎男) p21~49
※船場育ちの人たちに取材し、あいさつことばに限って、朝、日中などに分類、記載。
2. 文学作品からの引用会話文が掲載されているもの
・『東区史 第4巻 文化篇』大阪市東区法円坂町外百五十七箇町区会編纂 大阪市東区役所 1941
方言 p906~920(うち、船場言葉 p908~909)
※谷崎潤一郎『春琴抄』の会話を例に挙げている。
・『大阪弁善哉』牧村史陽著 六月社 1956.9
『細雪』の大阪弁 p104~115
※p107~108で『細雪』の会話を一つぬき出して、明治時代に使われた船場ことばにあらためたものがある。
・『京ことば大阪ことば』大阪読売新聞社編 浪速社 1965
明治・大正・昭和-変化を写す「細雪」 p79~81
※谷崎潤一郎『細雪』に登場する船場ことばについて書いている。
・『上方ことばの世界-懐徳堂記念講座より』徳川宗賢編 武蔵野書院 1985.11
細雪の言語生活(和田実) p7~40
※『細雪』の会話を言語学的に分析した講演録。
・『大阪弁』前田勇著 朝日新聞社 1980
今は夢、ご大家の言葉遣い―船場とその外周― p30~46
※『細雪』の会話などを参考に、大阪ことばについて書いている。
・『谷崎潤一郎と大阪(上方文庫27)』三島佑一著 和泉書院 2003.11
『細雪』の船場言葉 p163~185
※『細雪』の中の船場ことばを引用し、解説している。
3. 特徴的な船場ことばを文中に収載しているもの
・『なにわ歳時記-忘れかけてる庶民史』浅田柳一著 清文堂 1981.6
丁寧な船場ことば-滅びゆく純粋の大阪弁 p212~213
※「おでまし」(外出)、「おみや」(足)など、一部のことばのみ文中に例示。
・『おおさかののろけ』三田純市著 駸々堂出版 1987.2
あんさん、こんさん、中乗りさん p187~204
※「ゴワス」などの一部のことばを文中に例示。香村菊雄『船場ものがたり』から引用の会話文。その他、食満南北のぼんち論や、落語に言及している。
・『京ことば大阪ことば』大阪読売新聞社編 浪速社 1965
花嫁ご寮 p46~48
※「ごりょんさん」等のことばについて
・『船場育ち』楠本憲吉著 PHP研究所 1976
大阪弁の味・船場言葉の味 p157~160
※一部のことばのみ文中に例示。全体に船場の様子がわかる内容。
・『大阪弁の研究』前田勇著 朝日新聞社 1949
船場言葉 p275~279
※近世の資料なども参考に、一部のことばのみ文中に例示。
・『大阪弁善哉』牧村史陽著 六月社 1956.9
美しい船場ことば p95~103
※一部のことばのみ文中に例示。
・『大阪弁 第二輯』大阪ことばの会編 清文堂書店 1948
昔の船場ことば(蘆田止水)p31~34
※鴻池家に奉公していた親が使用していた船場ことばについて書いている。
4. 船場言葉がでてくる小説
小説では、船場で生まれ育った山崎豊子の小説(『暖簾』『花のれん』『ぼんち』『女の勲章』『女系家族』『花紋』など)や、田辺聖子の『姥ざかり』シリーズなどが、船場言葉をうまく使っているとされているようだが、香村菊雄や牧村史陽ら古い船場言葉を知る人からすると、随分変化した船場言葉となるらしい。一方で、三島佑一や前田勇のように、船場言葉を代表とする大阪弁を文章にすること自体が困難である、言葉は変化していくものである、という認識に立てば、これら作家の作品も「船場言葉」と考えて良いかと思われる。
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