当館所蔵の【資料1】p245「犯罪別・公訴時効の期間」という表があるが、【資料1】の出版が2007年であるため、最新の情報(2010年4月公訴時効制度改正 ※2013年3月19日現在)にあたるためには、直接法律の条文にあたるか、出版年が改正以降の資料にあたるべきで、この表の情報は古いことを伝える。
よって、調べ方として、
① まず、刑法で、知りたい罪名の条文をさがし、その法定刑を確認する。
② ①で調べた法定刑の上限が、刑事訴訟法250条「公訴時効期間」のどれに該当するか確認する。
という手順を伝える。
また、今回例として挙げられたものについては以下のとおり。
<殺人罪>刑法199条より、 殺人の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」。→公訴時効なし。
【資料5】p104~118では刑事訴訟法250条〔公訴時効期間〕についての詳細な解説があり、p105「「人を死亡させた罪であって死刑に当たるもの」については、公訴時効の対象から除外し、公訴時効を廃止して時の経過による公訴時効にかからないことにしたのである。これによって、人を死亡させた犯罪であって死刑に当たるものについては、30年経とうが50年経とうが何年経ってもその犯罪者を処罰できることになった」とある。
【資料6】p225~226に、2010年の刑訴法改正以降の公訴時効期間についての記述があり、死刑にあたる罪(殺人等)の公訴時効の廃止などにも触れている。
<窃盗罪>刑法235条より、窃盗の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」。よって、法定刑の上限は10年。→刑事訴訟法250条2項4号「長期15年未満の懲役もしくは禁固に当たる罪については7年」とある。
<名誉毀損罪>刑法230条より、名誉毀損の法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金」。よって、法定刑の上限は3年。→刑事訴訟法250条2項6号「長期5年未満の懲役もしくは禁固又は罰金に当たる罪については3年」とある。
回答プロセス:(1) 公訴時効の改正時期を確認。→【資料7】より、平成22(2010)年4月改正
(2) 自館OPACで、「時効」検索。→【資料1】(内容が古い)
(3) 刑法(その罪の法定刑の上限)および刑事訴訟法(その罪の公訴時効期間・250条)の条文を確認【資料2・3・4】。
(4) 刑事訴訟法の本で、出版が改正の2010年4月以降の資料を自館OPACで検索し、公訴時効について書かれた内容を確認。→【資料5・6】
<参考として>【資料7】より、「公訴時効」とは、犯罪が行われたとしても、法律の定める期間が経過すれば、犯人を処罰することができなくなるもの。例えば、殺人罪の公訴時効期間は、これまでは25年とされていたため、たとえ凶悪な殺人犯であっても、25年間逃げ切れば、処罰されることはなかったが、殺人罪など一定の犯罪について、公訴時効を廃止したり、公訴時効期間を延長する法整備がなされた。
参考資料:【資料1】 長戸路政行 著. 時効 : あなたは・時効で損する人か・得する人か? 改訂新版. 自由国民社, 1989.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002001320-00, 4426362032(p245「犯罪別・公訴時効の期間」 当館請求記号 324.1/ナ/07)
参考資料:【資料2】 六法 (刑法、刑事訴訟法の条文),
参考資料:【資料3】 〔法令データ提供システム:刑法〕http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html(最終確認2013/3/19),
参考資料:【資料4】 〔法令データ提供システム:刑事訴訟法〕http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO131.html(最終確認2013/3/19),
参考資料:【資料5】 河上和雄, 中山善房, 古田佑紀, 原田國男, 河村博, 渡辺咲子 編. 大コンメンタール刑事訴訟法 第5巻 (第247条~第281条の6) 第2版. 青林書院, 2013.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024201646-00, 9784417015864(p104~118「第250条〔公訴時効期間〕」 当館請求記号 327.6/ダ/5)
参考資料:【資料6】 福井厚/著. 刑事訴訟法 第7版. 有斐閣, 2012. (有斐閣双書プリマ・シリーズ)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023999216-00, 4641058490(p225~226 当館請求記号 327.6/フ12/)
参考資料:【資料7】 〔内閣府:公訴時効制度の改正について〕http://www8.cao.go.jp/hanzai/whitepaper/w-2011/html/zenbun/part2/s2_3_1c5.html(最終確認2013/3/19),
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