浄瑠璃の「蘆屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)」の「葛の葉子別れ」の段の中で、狐の葛の葉が詠む歌として有名だが、詠み人・出典ともに不明。
『大阪伝承地誌集成』(三善貞司/編著、清文堂出版、2008.5)「和泉市の章」のp.377-380「安倍晴明と母狐」の項参照。出典・詠み人はないが、p.379下段に、「「恋しくば」の歌は、平安時代の女流歌人である赤染衛門の「移はでしばし信太の森をみよ かへりもぞする葛の裏風」と和泉式部の「秋風は少し吹くとも葛の葉の うらみ顔には見えじとぞ思ふ」の贈答歌をもじったものであろう」としている。
増尾伸一郎「〈葛の葉〉の影-狐の異類婚と子別れ-」『国文学 解釈と鑑賞』2004年12月号によると、「「恋しくは」の歌が認められる最古の資料は、室町時代中期頃に撰述された『ほき抄』」とある。
『日本古典偽書叢刊 第3巻』(現代思潮新社、2004.3)収録の「ほき抄」を確認。p.177に「恋しくは」の歌があり、p.193の補注によると「神詠」とあり。
「神詠(しんえい)=神が詠んだとされる和歌。」(『日本国語大辞典』より)
↧