国際児童文学館所蔵資料にて調査しました。現時点で確認できたものを以下に列挙します。
『夕顔の言葉』(壺井栄/著 紀元社 1944)国際児童文学館請求記号【N440220/2】
※ほるぷ出版より『名著複刻日本児童文学館 第1集(32)』1978年に復刻。
8編収録の中の「小さな先生大きな生徒」(p.79-103)では、日本名に姓を改めて日本の家庭で働くことになった朝鮮の少女が描かれている。
『童話 東の子供へ』(秋田雨雀/著 日本評論社出版部 1921.3)国際児童文学館請求記号【N210315/2】
19編収録の作品の中に「朝鮮人の娘」(p.134-145) が収録。舞台は日本、朝鮮飴屋の娘の話。なお『日本児童文学 6(9)<55>』(日本児童文学者協会 1960.12.1)によると、秋田雨雀は「いてついた目」という作品で朝鮮の少年を描いているとあり。この作品について『続・秋田雨雀-その全仕事』(秋田雨雀研究会/編 共栄社 1976.5)収録の作品目録で確認したところ、『凍てついた目玉』(童話)という作品名で『早稲田文学 大正11年1月』に掲載されたとのこと。国際児童文学館未所蔵のため内容は未確認。
『金の星 4(10)』(金の星社 1922.10)p.22-28
「水汲み」沖野岩三郎 朝鮮が舞台。主人公は16歳の朝鮮人。
『金の星 4(11)』(金の星社 1922.11)p.4-11
「金の釣瓶」沖野岩三郎 朝鮮の白頭山が舞台。昔話。
以降、『金の星』では、5(2)まで連続して沖野岩三郎の朝鮮関連童話が掲載されている。
『金の星 4(12)』(金の星社 1922.12)p.4-10「頭と足だけの従五位様」、
『金の星 5(1)』(金の星社 1923.1)p.36-41「李如松のはなし」、
『金の星 5(2)』(金の星社 1923.2)p.70-75「メンコン蛙」「賢い裁判官」と4(10)から6作品あり。
※『金の星』は、ほるぷ出版より復刻版が発行されている。
沖野岩三郎の作品では、児童文学からは外れるかもしれませんが、『薄氷を踏みて』(沖野岩三郎/著 大阪屋号書店 1923.5)という創作的見聞録の作品に朝鮮が登場。
韓国の昔話や童謡をまとめたものとしては以下の資料がありました。
『童話集 石の鐘』(鉄甚平/著 東亜書院 1942.6)国際児童文学館請求記号【N420620/4】
『三韓昔がたり(学習社文庫)』(鉄甚平/著 学習社 1942.4)国際児童文学館請求記号【N411001/1-(11)】
『朝鮮童謡選(岩波文庫)』(金素雲/訳編 岩波書店 1933.1)国際児童文学館請求記号【N330115/1】
『朝鮮・台湾・アイヌ童話集(世界童話全集)』(近代社 1929.10)国際児童文学館請求記号【N290310/3-(26)】
※朝鮮童話集は松村武雄/著
『朝鮮童話集(朝鮮民俗資料 第二編)』(朝鮮総督府 1924.9)国際児童文学館請求記号【N240901/2】
『朝鮮童話集(新訳絵入模範家庭文庫)』(中村亮平/編 冨山房 1941.11再版)国際児童文学館請求記号【N151208/1-(16)/2】
<参考1>
調査を行うにあたって以下の資料を参考にしました。
『植民地朝鮮と児童文化 近代日韓児童文化・文学関係史研究』(大竹聖美/著 評論社 2008.12)
(中央図書館請求記号【384.5/112N】国際児童文学館請求記号【T081230/15】※図書館所蔵資料は貸出可能です)
「近代日韓児童文化・文学関係史年表」(p.355-386)において「植民地朝鮮関連児童文化・文学」(日本語を使用していたり、または朝鮮語と日本語を併用することで、〈植民地朝鮮児童文化〉としての性格を示しているもの)の項目でいくつか紹介されている。
『韓国・朝鮮児童文学評論集』(仲村修/編訳 明石書店 1997.3)(中央図書館請求記号【909/100N】国際児童文学館請求記号【N970310/5】※図書館所蔵資料は貸出可能です)
韓国・朝鮮児童文学の流れを評論・エッセイに焦点をあてて、文学論、児童文化運動をとりあげてまとめられたもの。解放前の評論や植民地時代を振り返った評論、「戦乱中の『少年世界』と文学運動」といった内容が盛り込まれている。
『日本児童文学 17(8)<178>』(日本児童文学者協会/編 盛光社 1971.8)
「特集:アジアと児童文学」
p.47-54 「朝鮮児童文学の歴史と現状」 韓丘庸
p.64-69 「児童文学者における中国・朝鮮・アジア-大正期の回想から戦後へ-」 斎藤秋男 →前述の雨雀作品に言及。
『日本児童文学 41(8)<490>』(日本児童文学者協会/編 文溪堂 1995.8)「特集:児童文学の戦争責任を考える」
p.70-77 「義勇軍と植民地の子どもたち」 陣野守正
p.84-89 「児童文学の戦争責任・戦後責任<文献リスト>」
『日本児童文学』では、ほかに、17(12)<182>(1971.12)の特集が「戦時下の児童文学」、19(11)<205>(1973.9)の特集が「戦時下のアジアと児童文学」となっている。
『白百合女子大学児童文化研究センター研究論文集 「児童文学研究大会」別冊特集号』
(白百合女子大学児童文化研究センター 2004.3)
p.6-23「近代日韓児童文化関係史 試論」大竹聖美
『児童文学研究 35』(日本児童文学学会 2002.10)
p.80-92「朝鮮総督府・朝鮮教育会『普通学校 児童文庫』-植民地朝鮮と日本児童文学-」大竹聖美
→前述『植民地朝鮮と児童文化 近代日韓児童文化・文学関係史研究』内に改稿して掲載。
『植民地時代の日韓児童文学交流史研究-朝鮮総督府機関紙「毎日申報」子ども欄を中心に』
(金永順/著 梅花女子大学大学院 2006.11)国際児童文学館請求記号【T061100/58】
朝鮮総督府の機関誌として、植民地時代の1910~1945年の35年間、朝鮮で発行され続けた唯一のハングルの日刊紙「毎日申(新)報」の子ども欄についての研究。
<参考2>
戦後の児童文学作品を対象としたブックリスト等としては以下のものがあります。
『朝鮮のある児童文学風景』(韓丘庸/著 あまのはしだて出版 1999.8)(中央図書館請求記号【909/127N】国際児童文学館請求記号【N990815/8】※図書館所蔵資料は貸出可能)
戦後(1990年代)の日本児童文学の中から「朝鮮」を描いた作品をコメントしている解説書。p.217-285に戦後(1945年~1999年)の「朝鮮を描いた児童文学作品年表」がある。
『朝鮮を理解する児童文学100冊プラス1の本』(韓丘庸/編著 エスエル出版 1988.11)(中央図書館請求記号【909/178N】国際児童文学館請求記号【N881101/4】※図書館所蔵資料は貸出可能)
戦後の日本児童文学の中で「朝鮮」を描いた作品を解説。
『子どもの本から「戦争とアジア」がみえる-日本編 おとなに読んでほしい300冊 教科書に書かれなかった戦争Part18』(長谷川潮・きどのりこ/編著 梨の木舎 1994.8)(中央図書館請求記号【210.75/12N/18】国際児童文学館請求記号【N830720/16-18】※図書館所蔵資料は貸出可能)
1945年の敗戦から現在までに出版された「日本の戦争」について書かれた子どもの本のブックガイド。第4章に「アジアの国で日本がしたことはどうつたえられているか」の中で朝鮮も取り上げられており、戦時下の作品にも少し触れられている。前述の壺井栄作品はp203に記載あり。
『戦争児童文学研究~アジア・太平洋戦争と朝鮮戦争、そして韓日の児童文学~』(朴麗彬/著 朴麗彬 2000.3)国際児童文学館請求記号【T000300/43】
研究論文で戦後の作品を取り上げている。
<その他参考>
『日本古書通信』不定期連載「日本植民地児童文学史」上笙一郎/著
2012.8現在、連載中。まだ朝鮮に関しては記述なし。
参考資料:『夕顔の言葉』(壺井栄/著 紀元社 1944),
参考資料:『童話 東の子供へ』(秋田雨雀/著 日本評論社出版部 1921.3),
参考資料:『金の星 4(10)』(金の星社 1922.10)[復刻版],
参考資料:『薄氷を踏みて』(沖野岩三郎/著 大阪屋号書店 1923.5),
参考資料:『植民地朝鮮と児童文化』(大竹聖美/著 評論社 2008.12),
参考資料:『韓国・朝鮮児童文学評論集』(仲村修/編訳 明石書店 1997.3),
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