岩蔵寺は野洲市大篠原にあります。『滋賀県百科事典』によりますと、概要は「(前略)土地では「篠原の薬師様」といって信仰があつい。薬師如来はふつう薬壺を左手でもっているが、この岩蔵寺像は薬壺を持たないで、右手施無畏、左手与願の印相となっている。最澄が785年(延暦4)比叡山にはいり草庵をかまえて、霊木から根本薬師堂(現、根本中堂)の主尊薬師如来を造立するがこれは薬壺をもたない立像の薬師であった。最澄造立薬師如来像はながく根本中堂の主尊としてつたえられたが、1435年(永享7)2月の火災で消失した。延暦寺根本薬師像の印相について『阿娑縛抄(あさばしょう)』の記述から察すると右手は施無畏、左手は与願であったようで、岩蔵寺薬師如来像は製作期は鎌倉時代であるが、延暦寺根本薬師像の姿をうつしだしたものとして注目すべき像である。重要文化財。(宇野茂樹)」とあります。なお、文中の「製作期」は「制作期」の誤植と思われます。
参考資料: 1 滋賀県百科事典 滋賀県百科事典刊行会∥編 大和書房 1984年 S-0300- 84 p.183,
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