中之島図書館では『酒餅論』の原本は所蔵がないが、複製の所蔵はあるので閲覧は可能。
「さて、めんるひの、長せんぎ。のびのびにして、うどんげなり。そばきりたてられ、いかゞせん。・・・」という文章の上部に挿絵があり、挿絵の中に「そはうつ所」と書かれている。
以下は調査の経過。
(1)日本古典籍総合目録で、『酒餅論』の写本、版本、複製の所蔵がわかる。
国立国会図書館所蔵の『酒餅論』は、国立国会図書館デジタル化資料で、下記の参考資料欄に記載のURLで、内容を見ることができる。
中之島図書館所蔵の複製の資料は、以下の二点。
『酒餅論 成簣堂叢書四』(民友社 大正3年[1914])
10丁オモテ本文の上に挿絵がある。
『近世文学資料類従 仮名草子編26』(近世文学書肆研究会/編 勉誠社 1977)
p.383の本文の上に挿絵がある。
(2)刊行年について
『近世文学資料類従 仮名草子編26 酒餅論』の解題p.428~431に、成簣堂文庫蔵初印本、赤木文庫蔵刊年不明求版本、国会図書館蔵改題求版本等の諸本を比較して、刊行年にふれている。
◇柳亭種彦が万治・寛文ごろとしている
◇成簣堂叢書刊行の案内パンフレットに貞享元禄初年の刊行本とある
◇寸錦亭主人が「近藤清春の事ども」で、酒餅論を享保十六年版としている
質問のとおり諸説があるが、「六月吉日とのみあって何年とないのは刊年の表記法として異様であり不自然である。しかしそれでは万治寛文あるいは貞享元禄初年という従来の考察とあまりにも隔たりすぎる。「酒餅論」の刊行年次確定は、刊年表記の完備した新しい版の出現を待つしかないもののようである。」と、まとめられている。
『室町時代物語大成 第七』(角川書店 1979) p.251 に、赤木文庫蔵「酒餅論」の解題がある。
「本書の刊年について、柳亭種彦は、「還魂紙料」の中「慳貧」の条で「酒餅論」を引いて、この書は万治もしくは寛文としている。しかし、寛文以降の書籍目録に本書の名は見えない。本書の版元の見須屋又右衛門は、江戸日本橋の書肆で「慶長以来書賈集覧」によると、元禄-享保の頃とある。本書の版式から見ても、その時代の版行と見て良さそうである。」
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