ご質問の男雛の冠の後ろに付いている細長いものは「纓」の一種の「立纓(りゅうえい)」と考えられます。小学館『日本国語大辞典』の「立纓」の項目を引くと、後ろ反りの状態の図が掲載されています。
回答プロセス:1. 386.1のあたりの書架をブラウジングし、年中行事の本等を見たが、雛人形の詳細については記載が見つからず。
2. 自館OPACで「雛人形」を検索
→『雛人形と武者人形 飾る知識と楽しみ方』淡交社編集局/編 淡交社 2010.1(請求記号:759/タンコ 資料コード:1015518168)がヒット。内容確認するも、特に男雛の冠についての記述は無く、写真もほぼ正面のもののため、確認できず。
3. Googleで「男雛」「冠」で検索
→ウィキペディアや雛人形についてのサイト等から「男雛の冠の後ろに付いている細長いもの」が「纓」であること、内裏雛の男雛の冠に付いているものは「立纓」であるという記載を発見。
4. 『日本史広辞典』日本史広辞典編集委員会/編 山川出版社 1997.10(請求記号:210.03/ニホン 資料コード:1012901128)で「纓」の項目を引く
→p240に冠の後ろに垂らした状態の「纓」の図が掲載。さらに、「纓の高さは巾子よりも低く作られたが、近世天皇は高くたわめて立纓(りゅうえい)と称した」との記述を発見。
5. 『日本国語大辞典 第13巻(もんこ-ん)』日本国語大辞典第二版編集委員会/編 第2版小学館 2002.1(請求記号:/813/N9/2-13 資料コード:1013841950)で「立纓」を引く
→p893に「立纓<孝明天皇肖像>」後ろに反った状態の図が掲載されているのを確認。質問者に図を見せ、男雛の冠の纓も後ろ反りと考えられる、と説明。
※その後、ネットで雛人形画像を検索したところ、人形店のサイトで明らかに前反りと見られる画像を発見。結局どちらが正しいのか不明。
【茨城県立歴史館さまからコメントにより下記の情報をいただきました】
・『有職故実大辞典』(鈴木敬三編 吉川弘文館 1996)
→P.74の「纓」によると,時代とともに纓をたわめる位置は高くなっていき,一般諸臣は巾子(冠の後頭部の凸部分を指す)よりも低く,大臣は巾子よりも高くし,天皇にいたっては深く垂下せずに45度近く傾斜させ,垂れている纓(垂纓)に対して立纓となる。近世の立纓は,巾子に並行して立てて天皇の特例としている。
・『有職故実図鑑』(河鰭実英編 東京堂出版 1997)
→P.32-37に纓の図が載っている。そのうち,No.120には「御立纓」(やはりこれも孝明天皇)あり。
・『故実叢書 32巻(装束図譜)』(故実叢書編集部編 明治図書出版 1993)
→束帯・衣冠・直衣といった装束についての説明と図・写真があり,纓は後ろに垂れている(=垂纓か?)。ただし,巻頭の図版にある「宸影 昭和御大礼に際し束帯(黄櫨染御袍)着御の宸影衣紋奉仕清岡長言(山科流)」の写真では,纓が立っており(=立纓か?),どちらかに反っているようにも見える。
・『素晴らしい装束の世界 いまに生きる千年のファッション』(八條忠基著 誠文堂新光社 2005)
→立纓については書かれていないが,装束について非常にわかりやすく絵や写真とともに解説されている。当館研究員のおすすめ。
【近畿大学図書館さまからコメントにより以下の情報を頂きました】
ネット上の情報ですが、ひな祭り文化普及協會の下記サイトがありました。
雛壇ストーリー
一段目/内裏雛(だいりびな)
登場人物2. 男雛(俗称:お内裏さま)
http://hina-matsuri.jp/lern_story01.html (2013/03/14確認)
関連文献として、『冠帽図會』の画像が国立国会図書館デジタル化資料で公開されていました。
冠帽図會
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2538817/9 (2013/03/14確認)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2538817 (2013/03/14確認)
立纓については、明治天皇の御写真がありました。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/ba/Meiji_tenno3.jpg (2013/03/14確認)
寄与者:茨城県立歴史館
寄与者:近畿大学図書館
備考:有益な情報をお持ちの方は、福井県立図書館までお知らせください。
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