昭和三十年版以降の『六法全書』地方税法 第二九二條 四 と、所得税法 第十二條が該当の条文である。
所得税法 第十二條の見出しに(基礎控除)と明記されているのは昭和三十年度以降だが、有斐閣発行の『六法全書』では、昭和二十七年版以降、編者の手により所得税法 第十二條に〔基礎控除〕の辞句が補足されている。
回答プロセス:シャウプ勧告(注1)後の六法全書を確認していく。
1.『六法全書』(有斐閣)昭和二十六年版
地方税法 第二九二條 四 課税総所得金額の但し書きに“所得税法第十四條によつて所得税の税額を計算する場合”の一文がある。
同年の所得税法を確認すると、第十四條〔変動所得の税額〕(注2)であり、依頼者の探している条文と一致しない。
2.『六法全書』(有斐閣)昭和二十七年版
地方税法 第二九二條 四 課税総所得金額の但し書きに“総所得金額から所得税法第十二條の規程による控除のみをした金額とすることができる。”の一文がある。
同年の所得税法を確認すると第十二條〔基礎控除〕(注2)とあり、依頼者の探している条件と一致する。
3.『六法全書』(有斐閣)昭和二十八年版、昭和二十九年版
上記2.に同じ
4. 『六法全書』昭和三十年版(有斐閣)
地方税法 第二九二條 四 課税総所得金額の但し書きに“総所得金額から所得税法第十二條の規程による控除のみをした金額とすることができる。”の一文がある。
同年の所得税法を確認すると(基礎控除)第十二條(注3)とあり、依頼者の探している条件と一致する。
5. 『六法全書』(岩波書店)
岩波書店発行の『六法全書』には、有斐閣発行にある編者による条文項目の補足が無いため、所得税法第十二條が基礎控除であることが明記されているのは昭和三十年版以降ということになる。
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(注1)シャウプ勧告:アメリカのコロンビア大学教授シャウプCarl S.Shoupを団長とする税制使節団が日本税制に対して行なった二回の勧告のことをいう。シャウプ使節団七名は昭和二十四年(一九四九)五月十日来日し、九月十五日第一次勧告全文を発表した。米国の経済学者シャウプ(C.S.Shaoup)を団長とする税制使節団が、昭和24年(1949)と同25年に日本の税制改革に関して出した勧告。(『国史大辞典』より)
(注2)各條数の前又は下に〔 〕がついている辞句は編集者の手になるもの。
(注3)各條数の前又は下に( )がついている辞句は法令自体についている見出し。
事前調査事項:依頼者より「シャウプ勧告(注1)により地方税法が見直され、"課税所得金額は総所得金額から基礎控除金額を控除した金額に変更する"という但し書きが作られたようだ。地方税法292条4項に記載されているかもしれない。」という情報があったので、シャウプ勧告後の六法全書を確認していくこととした。
参考資料:『六法全書』我妻栄, 宮沢俊義編. 有斐閣 昭和二十六年版~三十年版,
参考資料:『六法全書』末川博編集. 岩波書店. 昭和二十六年版~三十年版,
参考資料:『国史大辞典』 JapanKnowledge(立命館大学契約データベース)参照,
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