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「荒城の月」の瀧廉太郎の原曲と山田耕筰版の異同について調べたい(国立音楽大学附属図書館)

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原曲と山田耕筰版の異同について、まず以下の資料を見るよう紹介 ①『山田耕筰 作品全集 9 独唱曲 5』 後藤暢子編集・校訂 春秋社 1993 の校訂報告(p38)に   異同についての記載があります。(資料1参照) *同楽譜の校訂報告中の異同に関する部分を一部抜粋します。  [本レファレンス事例にとって最重要な指摘が含まれています。]  「瀧廉太郎作曲(歌唱旋律のみ)。土井晩翠の4行4連の詩を全4節の有節形式に作曲している。原曲  はロ短調、4/4拍子、8小節。曲想表示はAndante。…山田は、これを原曲より4度上のニ短調に移調し、  拍子は原曲どおり4/4拍子だが、原曲の8分音符を4分音符に置きかえ、4小節の前奏をふくむピアノ伴奏  を付し、全体を24小節とした。曲想表示はLent, dololoso e cantabileに改められた。」  「編曲時の草稿は現存せず、春秋社版旧全集第1巻に1917年とあるのが編曲年代に関する唯一の  記録である。…」  「…1918年の初版では、第1節1行目の歌詞「花の宴」の歌唱旋律は瀧の原曲どおり半音進行をふく  むものであった…再販時にこの♯は削除された。…」 *また、この他にも、当館は原曲を収載する『中學唱歌』(東京音楽学校著 〔東京〕 : 東京音楽学校, 1901  発売: 共益商社楽器店)や春秋社版旧〔山田耕作〕全集第1巻他の重要資料を所蔵しており、『山田耕筰  作品全集 9 独唱曲 5』(楽譜、校訂報告全文)と合わせ、「荒城の月」の瀧廉太郎の原曲と山田耕筰  版の異同調査に際しては、原資料の確認、諸版の比較検討をお勧めした。 *なお、google では、[PDF]「Ⅳ 目録法の問題点」IN:平成23年度 音楽資料・情報担当者セミナー 講義資料 •第3講:日本の音楽資料の組織化をめぐる現状と課題 講義資料 1章~3章[PDF 889KB]   4章~5章[PDF 1.9MB] (明治学院大学客員教授 林淑姫 氏) という[国立国会図書館主催セミナーの講義資料]が検索できますが、 その  (2)エディションと出版年  という章に、  瀧廉太郎「荒城の月(荒城月)」の歴史的に重要な版の写真が載せられているので、それらを見ることができます。  (なお、山田耕筰による楽譜は著作権保護のためインターネット公開不可となっております。)  [当館所蔵の山田耕筰の楽譜のコピーにつきましても、著作権保護期間中につき、調査・研究目的の利用のみ、  法の定める範囲での限定利用[原則、半分以下]しか認められません。]  [演奏目的の場合は、コピー申請者が著作権継承者からのコピーについての許可書類を添えない限り、  当館ではコピーできません。当然ながらコピーと演奏の許可は別です。当館は演奏についての許可の権利を  有しておりません。詳しくは音楽著作権協会にお尋ねください。](2014.10.28現在) ②「荒城の月」『中学音楽 : 音楽のおくりもの : 教師用指導書. 2・3下 / 教育出版株式会社編集局編』   (資料12参照)〔著作権等の関係により、セット全体が館内資料、館外貸出不可となっております。〕    ◎(歌のアルバム【教材解説】)p.22-23 に原曲由来の楽譜、p.67 山田耕筰補作編曲の楽譜が収載されています。   山田耕筰補作編曲楽譜は、歌唱部のみ16小節、調性を原曲に合わせているので、歌唱部のみの比較は可能と   言えます。p.67歌詞部の3番は「かずら」「歌う」で「うと」とルビがふられています。   〔p.23に「晩翠放談」から という囲み記事が載りますが、「第一に思い出したのは会津若松の鶴ヶ城…    …故郷の仙台の青葉城…滝君は竹田町郊外の岡の城跡…」又、「垣に残るはただかずら、松に歌う」    〔うと と言うルビ〕は重要です。〕   又、同書の以下にも解説が掲載されています。 ・「荒城の月」(歌のアルバム【教材解説】)p.220   (歌唱共通教材研究)p.228-231  ・「中学音楽 2・3下 音楽のおくりもの:教師用指導書 伴奏編」p.30-31 には、原曲に由来する楽譜〔(ピアノ編曲 新実徳英)の記述p.31楽譜下にあり〕及び歌詞が掲載されており、   3番の歌詞については、楽曲の歌詞及び詞章とも「かずら」の表記、楽曲歌詞「歌う」、詞章は「うとう」と   表記されています。  ◆①全集校訂報告及び原曲、その他重要な資料に加え、②のような解説類も調査対象とし、比較検討する  必要があると思われます。〔①全集校訂報告「…1918年の初版では、第1節1行目の歌詞「花の宴」の歌唱  旋律は瀧の原曲どおり半音進行をふくむものであった  … 再販時にこの♯は削除された。…」と  ②「…1917(大正6)年、山田耕筰によって編曲され、…原曲との違いは、…編曲譜3小節4拍めの音…」  は厳密に読めば、矛盾しているように思われます。全集校訂報告は、同符の変更について1918年初版後の  再販時に♯の削除があったとしているのに対し、②の解説では、1917年から削除があったように読める  からです。又、編曲年代についても 「編曲時の草稿は現存せず、春秋社版旧全集第1巻に1917年と  あるのが編曲年代に関する唯一の記録である。…」として、事実だけを述べ特定していない点にも  注目すべきと思われます。〕  ↑特に、当館所蔵の●『荒城の月 : 獨唱 / 瀧廉太郎原作 ; 山田耕作改編』 セノオ音樂出版社,   大正9 [1920] の版には、まだ♯がついており、その点はウィキペディアでも指摘されています。  (2014.10.28現在)(◆当館所蔵、検索・調査重要資料●『荒城の月 : 獨唱 / 瀧廉太郎原作 ;   山田耕作改編』及び資料9参照)   追調査1:録音資料、文献等(2014.9.19現在)  ③『瀧廉太郎 : 夭折の響き / 海老澤敏著』(資料2参照) *本事例、検索・調査の必読書。特に、「終章『荒城の月』その後-変貌受容史」他。  ④CD『荒城の月のすべて 』(資料3参照)には、荒城の月の様々な演奏が収められていますが、中でも   原曲版を使用した竹田少年少女合唱団の演奏は、唱歌として歌われた原曲の有り様を最も良く偲ばせて   くれ、山田耕筰版との違いについても、参考になる演奏と思われます。解説も大変充実しており、その後   の検索・調査の手がかりの資料としても期待でき、特に、原曲やセノオ楽譜・大正13年刊の山田耕筰版   の写真を続けて見られるのは貴重です。〔ウィキペディア荒城の月 「1924年(大正13年)発行の   同社の版ではシャープがない」(2014.10.13現在)参照〕   このCD中の竹田少年少女合唱隊の演奏は、本件において楽譜の比較だけではなく、重要な音資料として   参考にすべきと考ます。   CDが聴けない場合は、GOOGLEで、「竹田駅」「荒城の月」等を検索語にすると、いくつか聴くことが   できます。ただし、列車音等がかぶってくるので、クリアな音源に行き着く検索語を探索中です。   〔2014.10.20現在〕   *原曲版と称する演奏は、武田少年合唱隊以外にもCDやネットで聴くこともできますが、現在、瀧廉太郎の    伴奏譜が発見されていない以上、版比較の参考として聴く場合は、少なくとも無伴奏の斉唱[もしくは、    独唱]で、言葉の表記に基づく発音も原譜に忠実の方がより良いように思われます。  ⑤CD『芸術歌曲の誕生』(原典による近代唱歌集成 : 誕生・変遷・伝播 ; CD 22 )(資料4参照)中   の、荒城の月は独唱で原曲版が歌われています。     追調査2:その他、瀧廉太郎関係文献(2014.9.22現在)  ⑥『瀧廉太郎の生涯と作品』 遠藤宏著 東京 : 音楽之友社, 1950   ⑦『滝廉太郎』 属啓成著   東京 : 音楽之友社, 1961   ⑧『楽聖滝廉太郎の新資料』 小長久子著    大分 : あやめ書店, 1963   ⑨『滝廉太郎』 小長久子著    東京 : 吉川弘文館, 1968    ⑩『滝廉太郎 : 資料集』 大分県教育庁文化課編   シリーズ 大分県先哲叢書   〔大分〕 : 大分県教育委員会, 1994   ⑪『モーツァルトのザルツブルク : 新私のモーツァルト・クロニクル』 海老沢敏著    東京 : 音楽之友社, 1996    *⑧~⑩は瀧廉太郎関係、調査・研究の基本資料。 *楽譜資料等  ⑫『瀧廉太郎全曲集 : 作品と解説 / 小長久子編』(参考資料5参照)  ⑬◎『日本の唱歌 : 決定版 : 楽曲解説・歌詞発音新案ローマ字表記付き / 藍川由美校訂・編 』(参考資料6参照)   *⑫⑬も瀧廉太郎、「荒城の月」関係、調査・研究の基本資料。特に、⑬の楽譜及び解説は最重要です。    参考資料6[注記]中の「荒城月」という表記、読み方についての情報も解説中(p.93)にあります。  又、⑬の楽譜の中には、本居長世の編曲版もありますが、いかに山田耕筰版が原曲と違うかという点    から、本居長世編曲版も見ておく必要があります。    ⑬の解説中には、「かつら」「かずら」表記、発音問題(「…3番の歌詞「垣に残るはただかづら(葛)」は、    『中学唱歌』で「かつら」と印刷されていた。当時は、いっさい濁点のない伊澤修二の『小学唱歌集』序文    を見てもわかるように、濁点を省略することがあった。したがって濁点の有無に関係なく、実際には「かづら」    と歌われていた可能性もある。しかし、戦後の教科書や市販楽譜が「かつら」のまま出版しているのは明らかな    間違いだ。現代かなづかいを用いる場合、「葛」の正しい表記は「かずら」となる。」)や、版の比較に関わる    指摘はを含む⑬の解説全体は、本事例にとって大変重要ですので、調査の際には、しっかりと解説全体を読む    必要があります。   *シャープをとった山田耕筰版の中でも、この楽譜集中の「荒城の月」は重要です。諸版を比較すると曲想・    テンポ表示等違うものがあり、何が典拠か推測できない版もあります。ですので、日本歌曲として学習する    場合は、⑬の楽譜と①『山田耕筰 作品全集』(資料1参照)を必ず見ておくことをお勧めします。    何故なら、曲想・テンポ表示は、その曲の印象を大きく変えるばかりでなく、ブレス位置まで変えてしまう可能性    があるからです。(ちなみに、昭和・平成までのこの版での歌唱例の一つとしては、『日本歌曲全集』中の    「荒城の月」を挙げます。[資料⑪参照、ただし、資料⑪は、楽譜とのセットですが、歌詞は3番まで、    3番の歌詞の表記は、「かつら」「うたう」となっています。又、CDは3番をカットし、4番の歌詞で    歌っているため、「かつら」「うたう」の演奏からの確認は、不明です。)   *この楽譜の校訂者/編者によるCDも参考資料として最重要資料の一つです。山田耕筰版による演奏ですが、歌詞の    発音や表情、速度等細心の注意をもって、4番まで演奏している例は意外に珍しいと言え、本事例の 趣旨からは    ふさわしい参考例の一つと言えます。ただし、山田耕筰版に基づくCDは数多くあり、    山田耕筰版を基にしつつも若干違っていたり、更に、編曲したりしたCDにも名演奏があるということ    とは別で、あくまでも、版比較するには、山田耕筰版の意図に忠実である必要があるという意味からの、    参考例としての推奨盤にとどまります。(なお、当館では基本的に名演奏を推奨することは本務として    おりません。)(資料13参照) 追調査3: A.CiNii Articles B.CiNii Books(「荒城の月」を検索語とする検索 2014.9.25現在)     A調査の検索結果は、23件でした。      中でも、松本正「名曲「荒城の月」に関する研究」大分大学教育福祉科学部研究紀要 23(1),      115-126, 2001-04は、本件調査にとって最重要であり、表1原曲と編曲の相違等により的確に、      原曲と編曲の相違を確認でき、更に、詳細内容を読み込むことができます。他の文献についても      直接的に差異を指摘していないものであっても、確認すべきと思われます。     B調査の検索結果は、229件でした。  ざっと見たところ、ノイズが相当数あると推測される。本件にあっては、参考資料2等に書かれた      書誌記述を参考にツルたぐり調査をした方が効率的と思われます。 追調査4:A.当館OPAC B.当館ホームページ「童謡・唱歌索引」(「荒城の月」を検索語とする検索       2014.9.25現在)     A調査の結果は、総件数 334件、和書検索件数、 8件でした。(タイトル・フレーズ検索による)      なお、瀧廉太郎を検索語とする人名・団体名検索の結果は、14件でした。この検索結果中の資料      の中には本件調査に必要な情報を収載する文献があるものと思われます。     B調査の結果は、1件であったが、そのデータの中に収録[当館]請求記号が28件記載されています。      なお、インチピット:ミミラシドシラファファミ#レ           インチピット番号:3 3 6 7 1 7 6 4 です。      しかしながら、本件の基礎調査とする場合は、やはり唱歌教材現物にあたり、      #の有無等を確認した方が良いと思われます。     http://www.lib.kunitachi.ac.jp/collection/shoka/shoka.htm ◆当館所蔵、検索・調査重要資料(上述資料と重なるものも含みます。)  ・『山田耕筰 作品全集 9 独唱曲 5』(①、資料①参照)  ・『中學唱歌 / 東京音楽学校著』 東京音楽学校, 1901 〔明治三十五年四月刊行(四刷)〕    [目次・歌詞頁には、「荒城月」と記され、曲譜頁には「荒城の月」と記され、     作品名表記移行過程の証左の一つともなるものと思われます。]  ●『荒城の月 : 獨唱 / 瀧廉太郎原 作 ; 山田耕作改編』   セノオ音樂出版社, 大正9 [1920]〔セノオ樂譜九十二番〕(資料⑨参照)   [ウィキペディア荒城の月(2014.10.13現在)「1920年(大正9年)1月25日発行の同社の    版でもシャープがついている」と指摘されている当館所蔵のセノオ楽譜。〕    *なお、このセノオ樂譜は、現在、保存作業〔準備中〕のため当面貸出できません。    ・『山田耕筰作品資料目録 / 遠山音楽財団付属図書館編 』他(資料⑩参照)    [特に、図書館員にとって最重要資料と言って良いほどの検索・調査根本資料、     この資料によって、山田耕作の手稿譜、印刷譜他重要資料のほぼ全貌を     書誌的に確認できます。]  ・『瀧廉太郎 : 夭折の響き / 海老澤敏著』(③、資料2参照)  ・『日本の唱歌 : 決定版 : 楽曲解説・歌詞発音新案ローマ字表記付き / 藍川由美校訂・編 』(⑬、参考資料6参照) ◆本調査を担当した図書館としての資料状況報告、所感等を以下に記します。  ・本件を調べるにあたって、瀧廉太郎の原曲と山田耕筰の楽譜は数限りなくありました。(唱歌教材までは見切   れていません。)  ・ただし、本レファレンス事例本文の中に、諸版比較についての重要資料は挙げたつもりです。  ・本件のタイトルを山田耕筰版とし、編曲版としなかったのは、編曲という表記について、本質的かつ重要   な異論が『瀧廉太郎 : 夭折の響き / 海老澤敏著』(③、資料2参照)により、提示されているからです。  ●当館レファレンスは音楽学生への利用援助を主な業務としています。よって、演奏家や教師、街のリーダー   を志す学生は もちろん、愛好家として音楽を愛し続ける学生にとっても、「荒城の月」をはじめとして、   唱歌、日本歌曲の調査・研究は今後必須と今回の調査を通して痛感しました。   偶然巡り合った楽譜がどのような系譜をもった楽譜なのか?どんな目的によったものなのか?を吟味する   ことなく、演奏し、教え、真に愛好することは今後は難しくなるのでは?と思われました。  ・楽譜としては、『日本の唱歌 : 決定版 : 楽曲解説・歌詞発音新案ローマ字表記付き / 藍川由美校訂・編 』   (⑬、参考資料6参照)   は必見と思われますが、しっかり校訂、編集されたと思われる楽譜で違う見解の楽譜もあります。   それは原曲よりも、やはり山田耕筰の版に多く見られる傾向です。特に、「かつら」「かづら」「かずら」 についての指摘は説得力のある卓見と思われます。  ・ただし、原典を学術的に考究をした上で、瀧廉太郎の原曲を「かつら」と歌うCDの例もあります。(⑤資料4参照)   このCDは、楽譜と一体のセットの中の一つで、特に、『原典による 近代唱歌集成 原典印影Ⅳ』のp.120 「荒城の月」の楽譜及び歌詞は重要です。ちなみに、『中學唱歌』初版、初刷の、楽譜のタイトルは「荒城月」 です。(⑩p.43参照)      楽譜諸版や解説は千差万別、様々にあります。中には、事実を調査、吟味することなく、習慣的に   そのままとしてみたり、楽曲への指示を書いたり、歌詞の表記(特に歌詞部)等を代えたり、解説   に感想的な一言が、書誌的来歴や典拠を明らかにすることなく入っていたりする例が多すぎるよう   な気がしました。   アドヴァイスとして、感想が入るのは必ずしも否定しませんが、せめて、事実と編者個人の感想とは   か書き分けていただきたいと思います。   ただし、そうした楽譜、解説もあるのが現状ですので、例え、どんな良い楽譜であっても一つだけしか   見ていないというのは、今後は極めて危険で残念なことと考えています。   今後の唱歌、日本歌曲の検索・調査は、今後ますます重要視される必要があります。   ドイツ歌曲等の検索・調査がそれなりにしっかりできるの比べ、日本の作品についての検索・調査環境   はかなり劣っていると今回の調査で痛感しました。 山田耕筰の版による様々な楽譜や解説、それらを使用しての演奏がなされることは歓迎すべきですが、   今後について言えば、原本となる可能性のある山田耕筰版も色々あるので事実確認がきちっとできる   ように、「〇〇社、1917年の版に基づく」等の注記はお願いしたいところです。   しかしながら、現在の資料状況では、書誌的来歴を注記する例も少なく、あっても目録情報には反映され   難く、OPACでも識別できないので、レファレンスや利用援助が必要な状況はしばらくは続くと思われます。   ただし、大学図書館には学生の情報リテラシーの向上も図らなければならない責務もあるので、あまりに   オーバー・ティーチングになり、楽譜について他人任せで無頓着な学生、卒業生が出ないよう、図書館   としても援助の仕方にはよくよく配慮し、更に、もう一方で来館しない学生にも来館するようにはたらき   かける努力を不断に行うべきと考えます。    ◆「荒城の月」の瀧廉太郎の原曲と山田耕筰版の異同について調べたい   という質問に厳密に応じるためには、両者とも、より原譜もしくは原譜に近いものを重点的に探す   必要があると思われます。   楽譜の中では、やはり、資料1に挙げた『山田耕筰 作品全集 9 独唱曲 5』中の楽譜が最重要で、   異同調査のポイントも同楽譜の校訂報告中の解説に指摘された点は必須調査項目となると思われます。   たとえば、曲想・テンポ表示でも、各版色々違っています。〔ex:童謡唱歌名曲全集「想を込めて…」〕   ですので、色々な版を見るよりは、この楽譜をまず見る方が合理的な調査が可能になると思われます。    更に、同楽譜の校訂報告中の解説より、異同に関する部分を一部抜粋させていただきましたが、そこには   「土井晩翠の4行4連の詩を全4節の有節形式に作曲」と書かれているので、全4節が書かれており、   土井晩翠の原詩そのままの表記のあることも必要と思われます。何故なら、楽譜の書誌的来歴が明確でない   楽譜があまりに多いので、一々チェックして楽譜の純正度を判断するよりは、『山田耕筰 作品全集   9 独唱曲 5』を見た方が早いと思われるからです。ちなみに、瀧廉太郎の曲想表示Andanteと   と異同調査する山田耕筰の曲想表示が"Lent, dololoso e cantabile"か?"想を込めて"なのか?では、   演奏者や鑑賞者の受けとめ方はかなり違ってくるので、異同調査するには、やはり、できるだけ原譜同士を   比較した方が良いと思われます。又、原譜がインターネットや文献等で簡単に見られるようになってきてい   るので、典拠関係がはっきりしない楽譜を見るよりは、典拠が明示されているインターネット情報等を探し   出し、閲覧する方が安全確実でかえって早いと言えます。(2014.10.28現在)   更には、参考とするCDもできるだけ原譜を尊重した演奏をするものを探すべきと思われます。   (④参照資料3参照)(資料13参照)    ただし、原譜に手を入れた版や編曲の価値については別の問題で、むしろそうした多様な版の現れるこ   とを歓迎していますが、版の比較の際には、そうしたものの混入をできるだけ避ける必要があります。   両作品とも長く愛され、親しまれているだけに、他人の手がひそかに入っている版を瀧廉太郎や山田耕筰   の純粋な版と思い違いしているケースに遭遇することが多いので、レファレンスとしては最大の注意を払う   必要があります。 ◆「荒城の月」の瀧廉太郎の原曲と山田耕筰版の異同について調べたい 調査を第一歩として  本レファレンス参考事例調査の特に後半の調査に当たって、「何をどう調べたら良いか?」について  役に立った資料を以下に挙げます。  『より深く音楽を知るための実践的技法 / 村田千尋著』 (資料14参照 特に、第Ⅰ部 楽譜をめぐって    中でもp.22-51  ≪2声インヴェンション≫各版の各版の比較表 と その周辺記述 は 調査の際   何を問題にすべきか? それをどのような楽譜に求めるべきか?等のヒントが得られます。)  『知って得するエディション講座 / 吉成順著』  (資料15参照 特に、序章 エディション早わかり   ガイド中の [楽譜]エディション用語等は必須最低限知識と思われます。)  *楽譜で版の異同を調べる今回の調査は、将来、楽譜のエディション検索・調査(図書館協力範囲)   →(質問者の楽譜のエディション研究/学習)につながるものです。   その第一歩とも言ってよいかも知れません。そのため、比べあうべき、対象楽譜について、図書館側   は熟知する必要があります。エディションの中身についての学習や研究はもちろん質問者ですが、   楽譜については、どの版とどの版が重要であり、何故か?等の知識は図書館ができればサポートすべき   で、その知識の基礎が上記資料には書かれています。残念ながら、直接、日本の楽譜についてでは   ないのですが、クラシックの楽譜の版比較についての重要点を知ることができます。なお、他にも   そうした図書はありますが、上記2冊は学生にも分かるように書かれているので、紹介させていただき   ました。  *なお、本事例の具体的な調査に関しては、『日本の唱歌 : 決定版 : 楽曲解説・歌詞発音新案ローマ字表記付き    / 藍川由美校訂・編』の楽譜及び解説を度々参照させていただきました。(資料6参照) 参考資料:1 『山田耕筰 作品全集 9 独唱曲 5』 後藤暢子編集・校訂 春秋社 1993 の校訂報告(p38), 参考資料:2 タイトルと著作者 瀧廉太郎 : 夭折の響き / 海老澤敏著 シリーズ 岩波新書 出版社・発行年 東京 : 岩波書店, 2004, 参考資料:3 タイトルと著作者 荒城の月のすべて 演奏者 さまざまな演奏者. 出版社・発行年 Tokyo : King, 2003 形態 録音ディスク1枚 : ディジタル : , 1.4 rpm. : , ステレオ ; 12 cm. + パンフレット 注記 瀧廉太郎による原曲とそれにもとづく編曲, 山田耕筰編曲の # のつかない版とそれにもとづく編曲, および山田耕筰作曲の「哀詩 : 荒城の月を主題とする変奏曲」からの抜粋を収録 演奏手段: 器楽独奏, 合奏, 合唱または独唱 歌唱: 日本語, ドイツ語, 教会スラブ語 (歌詞付) 容器のタイトル: 荒城の月 作詩: 土井晩翠 録音: 1925-2003年 "瀧廉太郎の没100年記念企画"--帯 一部モノラル録音 全20曲, 参考資料:4 タイトルと著作者 芸術歌曲の誕生 演奏者 さまざまな演奏者. 出版社・発行年 Tokyo : Victor, 2000 形態 録音ディスク1枚 : ディジタル : , 1.4 rpm. : , ステレオ ; 12 cm. 注記 演奏手段: 主にピアノまたはピアノとリード・オルガンまたは筝伴奏による合唱, 独唱, 斉唱; 第9曲は無伴奏混声合唱 歌唱: 日本語 "国民唱歌―学生歌・はやり歌・軍歌"作曲: 滝廉太郎 (第3-14曲) ほか 録音: 1999-2000年 セット: 原典による近代唱歌集成 : 誕生・変遷・伝播 ; CD 22 内容 薩摩潟 -- 従軍行 -- 散歩 -- 日本男児 -- 春の海 -- 四季の滝 -- 花 -- 納涼 -- 月 -- 雪 -- 荒城の月 -- 箱根八里 -- 豊太閤 -- 荒磯 -- 露営の夢 -- 常闇 -- 晩秋 -- 東天紅 -- 四つ葉のクローバー -- 海女 -- 和歌の浦景 -- 春の野川 -- 雨 -- 二人の恋 -- 春の行衛, 参考資料:5 タイトルと著作者 瀧廉太郎全曲集 : 作品と解説 / 小長久子編 出版社・発行年 東京 : 音楽之友社, 昭和44 [1969] 形態 スコア1冊 (95 p.) : 複製 ; 26 cm. 注記 独唱, 合唱, 唱歌, ピアノ曲を含む 歌詞: 日本語 付: テキスト 付: 年譜一覧, 略歴, 鈴木毅一略歴, 東くめ略歴, 参考資料:6 タイトルと著作者 日本の唱歌 : 決定版 : 楽曲解説・歌詞発音新案ローマ字表記付き / 藍川由美校訂・編 版 改訂版 出版社・発行年 東京 : 音楽之友社, 2006 形態 スコア1冊 (116 p.) ; 27 cm. 注記 歌詞: 日本語 付: 「日本の唱歌」改訂版を編むにあたって (p. 2-8). テキスト 内容 -- 荒城月 : 無伴奏 / 土井晩翠作詞 ; 瀧廉太郎作曲 -- 荒城の月 : ピアノ伴奏譜 / 土井晩翠作詞 ; 瀧廉太郎作曲 ; 山田耕筰編曲 -- 荒城の月 / 土井晩翠作詞 ; 瀧廉太郎作曲 ; 本居長世編曲  --解説他, 参考資料:7 タイトルと著作者 音楽教科書掲載作品10000 : 歌い継がれる名曲案内 / 日外アソシエーツ株式会社編 出版社・発行年 東京 : 日外アソシエーツ, 2011 形態 1052 p. ; 21 cm. 注記 発売: 紀伊國屋書店 (東京) 索引あり, 参考資料:8 第3巻「荒城の月」楽譜p.10-11 解説p.165-164 タイトルと著作者 日本歌曲選集 : 解説付 / 大賀寛監修 ; 昭和音楽大学研究所編著 出版社・発行年 東京 : 全音楽譜出版社, 2005 形態 スコア1冊 (3 v.) ; 28 cm. 注記 ピアノ伴奏付 歌詞: 日本語 付. 概論, 演奏の手引き, 作曲者プロフィール 付: テキスト, 作詩者プロフィール 曲名五十音順索引, 曲名総索引, 参考資料:9 タイトルと著作者 荒城の月 : 獨唱 / 瀧廉太郎原作 ; 山田耕筰改編 出版社・発行年 東京 : セノオ音樂出版社, 大正9 [1920] 形態 スコア1冊 (2 p.) ; 31 cm. 注記 演奏手段: 独唱とピアノ 歌詞: 日本語 タイトルは見出しによる 付: テキスト 付: 解説, 参考資料:10 タイトルと著作者 山田耕筰作品資料目録 / 遠山音楽財団付属図書館編 出版社・発行年 東京 : 遠山音楽財団付属図書館, 1984 形態 24,680 p. ; 26 cm. 注記 山田耕筰の肖像あり 内容 付: 略年譜, 参考資料:11 タイトルと著作者 日本歌曲全集 演奏者 さまざまな独唱者, 伴奏者 (CD). 出版社・発行年 東京 : ビクター音楽産業, 1991 形態 録音ディスク32枚 (1455分) : ディジタル, 1.4 cm/s., ステレオ ; 12 cm.スコア32冊 ; 26 cm. 注記 演奏手段: 独唱 (主にピアノ伴奏) 歌唱: 主に日本語 (CD) 歌詞: 主に日本語 (一部ローマ字表記付) (楽譜) 監修: 畑中良輔 付属資料: 日本歌曲について / 畑中良輔著. 図書1冊 (156 p. : 肖像 ; 26 cm.) 特典盤: 録音ディスク1枚 : ディジタル ; 12 cm. 付属資料に, 収録曲目一覧, 作曲家とその作品, 演奏者プロフィール, 曲名索引を収録, 参考資料:12 タイトルと著作者 中学音楽 : 音楽のおくりもの : 教師用指導書. 2・3下 / 教育出版株式会社編集局編 出版社・発行年 東京 : 教育出版, 〔2012〕 形態 2冊 ; 26 cm. 注記 付属資料: CD11枚,CD-ROM1枚 (12cm), DVD1枚 (12cm), 解説編 (248p) ,伴奏編 (128p) 観賞CD解説 (55p) 解説編のISBN:9784316112657 伴奏編のISBN:9784316112688 範唱・伴奏CDのISBN:9784316112718 合唱パート別練習用CDのISBN:9784316112749 鑑賞CDのISBN:9784316112770, 参考資料:13 タイトルと著作者 故郷 (ふるさと) : 文部省唱歌集 / 藍川由美 演奏者 藍川由美, ソプラノ ; 花岡千春 (第1-2, 8-9, 17-19, 23-26曲), 高須亜紀子 (第3-7, 10-16, 20-22曲), ピアノ. 出版社・発行年 Tokyo : Camerata, p1996 形態 録音ディスク1枚 + (52分) : ディジタル : , 1.4 rpm. : , ステレオ ; 12 cm. + パンフレット 注記 "原則として初出のピアノ伴奏譜を用い, 現行の教科書ではカットされている歌詞も全篇収録することにした"--解説 歌唱: 日本語 (歌詞付) 内容 夏は来ぬ / 佐々木信綱作詞 ; 小山作之助作曲(01:57:) -- 港 / 旗野十一郎作詞 ; 吉田信太作曲(01:07:) -- 花 / 武島羽衣作詞 ; 瀧廉太郎作曲(02:22:) -- 荒城の月 / 土井晩翠作詞 ; 瀧廉太郎作曲 ; 山田耕筰編曲(05:52:) -- 箱根八里 / 鳥居忱作詞 ; 瀧廉太郎作曲 ; 山田耕筰編曲(03:10:) -- 青葉の笛 / 大和田建樹作詞 ; 田村虎蔵作曲(01:59:) -- ふじの山 / 巌谷小波作詞 ; 作曲者未詳(01:34:) -- 春が来た / 高野辰之作詞 ; 岡野貞一作曲(00:54:) -- われは海の子 / 宮原晃一郎作詞 ; 作曲者未詳(03:34:) -- 虫のこえ / 作者不詳(01:15:) -- かたつむり / 作者不詳(00:41:) -- 案山子 / 作者不詳(01:12:) -- 紅葉 / 高野辰之作詞 ; 岡野貞一作曲(01:28:) -- 雪 / 作者不詳(00:51:) -- 冬の夜 / 作者不詳(02:02:) -- 茶摘 / 作者不詳(01:31:) -- 汽車 / 作詞者未詳 ; 大和田愛羅作曲(01:20:) -- 村祭 / 作者不詳(01:26:) -- 春の小川 / 高野辰之作詞 ; 岡野貞一作曲(01:58:) -- 村の鍛冶屋 / 作者不詳(01:45:) -- 冬景色 / 作者不詳(01:59:) -- 鯉のぼり / 作者不詳(02:06:) -- 海 / 作者不詳(01:50:) -- 早春賦 / 吉丸一昌作詞 ; 中田章作曲(02:45:) -- 朧月夜 / 高野辰之作詞 ; 岡野貞一作曲(01:43:) -- 故郷 / 高野辰之作詞 ; 岡野貞一作曲(02:02:), 参考資料:14 タイトルと著作者 音楽の思考術 : より深く音楽を知るための実践的技法 / 村田千尋著 出版社・発行年 東京 : 音楽之友社, 2000 注記 文献あり 索引あり, 参考資料:15 タイトルと著作者 知って得するエディション講座 / 吉成順著 出版社・発行年 東京 : 音楽之友社, 2012,

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