『日本を知る事典』p293「化粧」の項に、次のような記述がある。
《神がかりの状態になるための前提である。祭りの際に〈よりまし〉になる子供が必ずきれいに化粧するのも、それが神が降りたもう目印になるためでもあるが、またただの子供ではないことを表わす扮装でもある。》
《人間が生まれて最初の化粧は宮参りの時額につけるアヤッコ・ヤスコの類(紅・白粉・鍋墨などでx印・犬の字などを書く。神社のゴム印を押す所もあるように形は変化しているが)である。子供が川に遊びに行く時は必ず竈神・火の神・荒神の加護を受けている者という表示があれば、河童に引き入れられないと信じていたからで、町の祭りで山車をひく幼児が花笠をかぶりきれいに化粧してその上にさらに鼻筋だけ真白く塗るのなども同じことで、後者の方がみめうるわしくなっているだけのことである。》
顔に施す化粧のバランスに関する資料は確認できなかったが、ほかにも子どもの化粧について参考になる下記資料を紹介した。
『祭・芸能・行事大辞典 下』
⇒p1122「稚児」
特に寺社での儀礼や祭礼の場で、美しく着飾って化粧をし、神前・仏前へ行列する子どもたちのことをいう。今日の都市祭礼などでは、稚児行列が盛況に行われており、小学校就学前の幼児(幼稚園・保育園児)を集めて、平安朝風の古風できらびやかな装束で身を飾らせ、顔には白粉を塗って化粧をさせ、行列をさせつつ保護者が脇に随伴し、神輿や山車の巡行の先導をさせるという形が一般的である。
『精選日本民俗辞典』
⇒p352~353「稚児」
祭りの当日は化粧し、着飾り、騎乗して行列の主役となる。(略)神が稚児の姿、童形で出現する小さな神という神観念があり、稚児は神そのもの、あるいは神が憑代とされ、神祭の主役になる。(略)現在、祭礼・法会などにおいて親に伴われて参加する稚児行列や祭礼の供物頭上運搬役の少女などは儀礼を飾る風流という性格が強い。
『化粧の民俗』
⇒p11「同じく化粧も、自己を殺し、神に仕える証であったと思われ、神の言葉を伝え、神の姿をして舞う巫女や、神霊を迎える尸(よりまし)としての童子は、化粧をほどこし祭りの場に臨まなければならなかった。」と記載あり。
『化粧』
⇒p16「祭事に男が女装することは全国的に広く行われている獅子舞の斎場をかこう童子が白粉をつけ、赤き衣を着て女装するのや、神輿をかつぐ若衆が顔に白粉を塗って女装するのも、神事には潔白をもって奉仕するということに由来するものではなかろうか。」と記載あり。
『いわてのおまつり』
⇒p139「花巻まつり」
「はやし方の女の子は鼻筋に一本白粉をぬり、おちょぼ口に紅をさし」と記載あり。
『今昔花巻まつり』
⇒花巻祭りの写真が多く掲載。そのなかに囃子方の児童の様子が確認できる。鼻筋に白く白粉が塗られ、額には黒い丸がふたつ眉上に書かれ、赤い口紅を塗っている。
回答プロセス:・380~「祭り」「化粧」をブラウジング。
・民俗関係資料から「化粧」の項目を調査。
事前調査事項:『日本民俗事典』 『完全保存版日本の祭り400』
参考資料:『日本を知る事典』大島 建彦∥〔ほか〕編 社会思想社∥出版 1980年, (http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000120402-00)
参考資料:『祭・芸能・行事大辞典 下』小島 美子∥〔ほか〕監修 朝倉書店∥出版 2009年, (http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000462320-00)
参考資料:『精選日本民俗辞典』福田 アジオ∥〔ほか〕編 吉川弘文館∥出版 2006年, 4642014322(http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008129712-00)
参考資料:『化粧の民俗』石上 七鞘∥著 おうふう∥出版 1999年, 4273030608(http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002801289-00)
参考資料:『化粧』久下 司∥著 法政大学出版局∥出版 1978年, 4588200410(http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000046551-00)
参考資料:『いわてのおまつり』東北の祭り刊行会∥編著・出版 1989年, (http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002014460-00)
参考資料:『今昔花巻まつり』似内 壮蔵∥著 花巻開町400年祭実行委員会∥出版 1992年, (http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I036205478-00)
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