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井伏鱒二著『屋根の上のサワン』で、「私」とサワンが別れる最後のシーンの季節を知りたいです。(立命館大学図書館)

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物語の中で「初夏」や「夏が過ぎ、秋になつて」といった表現があり、また、サワン(雁)や植物の生態描写で季節が表現されている箇所がいくつかありました。しかし、「私」とサワンの別れの場面においては、季節を断定できる情報や表現は見当たりませんでした。 なお、『屋根の上のサワン』と季節について論じている文献がありましたのでご紹介します。 ・田口 守 「教材研究『屋根の上のサワン』 : 「月前間雁」歌との比較を中心に」 教育研究所紀要, 12, 1980-03 ・佐野 比呂己「『屋根の上のサワン』の冒頭部分の季節について」解釈 46(11・12) (通号 548・549). 解釈学会, 2000-12 ・涌田 佑「井伏鱒二と牧野信一--「屋根の上のサワン」から「晩春の旅」まで」すばる 4(1), 集英社, 1982-01 また、この作品についての著述がありましたのでご紹介します。 ・「覚え書」 『井伏鱒二自選全集』 第1巻 p.405 早稲田で同級生の椎名由之(千葉県印旛沼のほとり大森町の出身)から雁を生捕りにして飼つた話を聞き、習作としてまとめて保存してゐた。 ・「サワンのこと」 『井伏鱒二全集』 第22巻, 筑摩書房, 1997-9 p.581-582 私は雁を飼った経験はないが、学生時代に椎名由己という同級の友人から、飼いならした雁を逃がした話を聞かされた。(中略)私は椎名君を「私」と想定し、話のいきさつはつくりごとで「サワンの話」を書いた。 ・伴 俊彦「井伏さんから聞いたこと その一 -- 「屋根の上のサワン」」 井伏鱒二全集 第9巻 (月報3), 筑摩書房, 1964 p.2-3  「同級生の椎名由己が、子供の頃に雁を捕まえて飼っていたが秋の或る日に逃げられてしまい、仲間が連れていったんだろうと話してくれたのを書いた」といった内容の記述がありました。 ・「井伏文学略年譜」 『井伏鱒二 : 講演と対談』 熊谷 孝 著, 鳩の森書房, 1978-7, p.299に、上記「井伏さんから聞いたこと その一 -- 「屋根の上のサワン」」(『井伏鱒二全集』第9巻 (月報3))が一部引用されています。 回答プロセス:1.本文中の描写や文脈から季節の描写を探した。  テキストは『井伏鱒二全集』 増補版, 第1巻 筑摩書房, 1974年を使用した。 1-1. 物語の途中に「初夏」や「夏が過ぎ、秋になって」という表現はあるが、「私」とサワンとの別れの場面にはどの季節であるかの明示はなかった。  p.74 沼池は、すでに初夏の裝ひをしてゐました。  p.75 やがて夏が過ぎ、秋になつて、或る日のことです。 1-2. サワンの様子や植物の描写などから季節を表現している箇所がいくつか見つかった。  p.74 その岸には私の背丈と殆ど同じ高さに細い莖の靑草が繁り、水面には多くの水草の廣い葉や純白の花が成育してゐました。  p.79 岸に生えてゐる背の高い草は、その莖の尖端にすでに穗狀花序の實をつけて、私の肩や帽子に、綿毛の種子が散りそそいだのであります。  p.79 彼の僚友達の翼に抱へられて、彼の季節むきの旅行に出て行つてしまつたのでありませう。 2. 雁についてや、サワンとの別れの場面に登場した穂状花序の実をつける植物について、事典や辞書を引いた。検索結果と本文中の雁や植物の描写を照らし合わせたが、季節を断定するには至らなかった。 2-1. かり・がん【雁・鴈】 ・秋に渡来し、春、北へ帰る渡り鳥。(秋の季語)  『小学館 全文全訳古語辞典』 小学館, 2004 ・ガンカモ科の大形の鳥の総称。一般にはマガンをさすことが多い。多くは北半球の北部で繁殖し、秋に南方へ渡る。  『日本国語大辞典』 第3巻 第2版, 小学館, 2000 2-2. すいじょう‐かじょ【穂状花序】 ・伸長した花軸に柄のない花が穂状につくもの。麦・イノコズチ・オオバコなどにみられる。  『大辞泉』 上巻 第2版, 小学館, 2012 ・花序の軸が長く,無柄の花を側生するものをいう(オオバコ,ワレモコウ)  『岩波 生物学辞典』 第5版, 岩波書店, 2013 3. GoogleやCiNii Research、NDLサーチで、「屋根の上のサワン」、「植物」、「季節」、「研究」などのキーワードを組み合わせて論文や記事を検索した。 4. 井伏鱒二の全集や作品集などから「屋根の上のサワン」に関連する情報がないか目視で確認した。 参考資料:「教材研究『屋根の上のサワン』 : 「月前間雁」歌との比較を中心に」 田口 守, 『教育研究所紀要』 12, 1980-03. 茨城大学学術情報リポジトリ https://doi.org/10.34405/00013706, (最終アクセス 2025-02-19) 参考資料:『解釈』 46(11・12) (通号 548・549), 解釈学会, 2000-12. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000003256-i4880854, 参考資料:『すばる』 4(1), 集英社, 1982-01. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000032184-d7951734, 参考資料:『井伏鱒二自選全集』 第1巻, 新潮社, 1985-10. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002353361 国立国会図書館デジタルコレクション(国立国会図書館内/図書館・個人送信限定) https://dl.ndl.go.jp/pid/12483492/1/43, 4943855113(最終アクセス 2025-02-19) 参考資料:『井伏鱒二 : 講演と対談』 熊谷 孝 著, 鳩の森書房, 1978-7. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001384280, 参考資料:『井伏鱒二全集』 第9巻 月報3,筑摩書房, 1964. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000971149, 448070339X 参考資料:北原保雄 編. 小学館全文全訳古語辞典. 小学館, 2004. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004270308, 4-09-501554-3 参考資料:日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編. 日本国語大辞典 第3巻 第2版. 小学館, 2001. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002987787, 4-09-520950-X 参考資料:池上 秋彦 (他)編. 大辞泉 上巻 第2版 あ-す. 小学館, 2012. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I14231672801, 9784095012131 参考資料:巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也, 塚谷裕一 編集. 岩波生物学辞典 第5版. 岩波書店, 2013. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I024250848, 978-4-00-080314-4

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