太々餅については、『芝大神宮氏子周辺歴史覚書帳』p.148-149に詳しい。
創業は不詳であるが、1823年(文政6)に豊後臼杵藩の殿様が姫君を伴って神明の参詣の帰りに太々餅に立ち寄った、とあり、廃業は1941年(昭和16)頃とある。
『大江戸趣味風流名物くらべ 下』p.146-148「餅屋 芝 太々餅」に、2代の時に神田にも店を出し、芝と神田の店はともに栄えたとあるが、神田の店は昭和5、6年頃に廃業、芝の店も戦争中に店を閉めた、とある。
餅については、『芝大神宮御鎮座一千年記念社史』p.82に詳しい。
大量に供えられる餅の処分に苦労していたお宮が、宮前にできた餅屋にそれを引き取ってもらうようになり、名物となった様だ、とある。
さらに、餅(小さくダンゴが串に刺して何個かで1本になっていてまわりにアンコがべったりとはりめぐしてある)は一寸茶色がかった色をしており、お供えの下りであることから、セイロでふかす前に焼いたものと思われ、そうしてカビやヨゴレ等を散り去った後、ふかして、つき直してからダンゴにしたそうだ、とある。
店の場所については、『芝大神宮御鎮座一千年記念社史』p.55に「大正五年より同七年 芝大神宮周辺図」があり、芝大神宮の石だたみ中程左側に「太々餅」と記載されている。
また、『地籍台帳・地籍地図<東京> 第5巻』p.223にも、同様の位置に「太々志るこ」と書かれた地図がある。
『明治東京歳時記』p.279-282「芝神明祭」の項p.281に、「太々餅(だいだいもち)も芝太神宮の名物と知られている」と記載がある。
p.280-281に「芝神明祭」の挿絵があり、門前の様子がうかがえる。挿絵の説明に「左端は名物太々餅の店」とある。
[港区ゆかりの人物データベース]「浮世絵散歩」「芝神明」の項に「江戸自慢三十六興 芝神明 生姜市」の浮世絵があり、門前の様子がうかがえる。
『隠居大名の江戸暮らし』p.143に、「江戸の名物菓子」として、またp.145に1800年代の菓子として「芝神明の太々餅」が紹介されている。
p.144には「芝神明の太々餅の商標」の記載がある。
『番付集成 下』p.159-196「五、 大正末期の流行と世相」の項p.187「344 東京名代食物番附」に、「前頭 芝神明 太々餅」と記載がある。
『幕末維新懐古談』p.89に、「よくお土産にされた」との記載があり、「だいだいもち」と仮名がふってある。
『東京の三十年』p.15に、「芝の神明宮に入ろうとするところの太々餅(だいだいもち)の店」との記載がある。
『ふるさとの菓子』p.102に、太々餅とは縁起を祝う「代々(だいだい)」の同音、とある。また同ページに太々餅のイラストが記載されている。
『東京おぼえ帳』p.372-374に、太々餅のはじまりや、店主が語った客商売心得話が記載されている。
『明治っ子雑記帳』裏表紙側(見返し)に地図がある(「大々餅」と表記)
読売新聞データベース[ヨミダス歴史館]
読売新聞1921年(大正10)3月31日朝刊p.4に、「太々餅創業三百年記念デー」の広告が掲載されている。
読売新聞1907年(明治40)3月10日朝刊p.3に、1907年(明治40)の博覧会用売店の様子が掲載されている。
朝日新聞データベース[朝日新聞クロスサーチ]
朝日新聞1907年(明治40)4月26日東京朝刊p.6「東京博覧会」の記事の中に、飲食店は位置によって繁昌が異なり、芝太々餅店は人の往来が最も多い三号館前にあって最上の位置であるとともに、店の構造が春日式で物珍しいためか足を止める西洋人も多く、異人汁粉屋のあだながついた、とある。
朝日新聞1907年(明治40)3月18日東京朝刊p.6「東京博覧会」の記事にも、当時の様子について記載がある。
(2023年1月更新)
参考資料:芝大神宮氏子周辺歴史覚書帳芝大神宮/編芝大神宮社務所, (p.148-149)
参考資料:大江戸趣味風流名物くらべ下吉村 武夫/著西田書店, (p.146-148)
参考資料:芝大神宮御鎮座一千年記念社史芝大神宮府社芝大神宮社務所, (p.82,55)
参考資料:地籍台帳・地籍地図第5巻地図資料編纂会/編柏書房, (p.223)
参考資料:明治東京歳時記槌田 満文/編青蛙房, (p.279-282)
参考資料:隠居大名の江戸暮らし江後 迪子/著吉川弘文館, (p.143-147)
参考資料:番付集成下林 英夫/編柏書房, (p.187)
参考資料:幕末維新懐古談高村 光雲/著岩波書店, (p.89)
参考資料:東京の三十年田山 花袋/作岩波書店, (p.15)
参考資料:ふるさとの菓子中村 汀女/著アドスリー, (p.102)
参考資料:東京おぼえ帳平山 蘆江/著住吉書店, (p.372-374)
参考資料:明治っ子雑記帳大林 清/著青蛙房, (裏表紙(見返しに地図あり))
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