残念ながら、「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」の影の色彩が、青であることを解説した資料は見つかり
ませんでした。
「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」の解説がある資料をご紹介します。
また、ルノワールの同時期の作品「陽光の中の裸婦」「ぶらんこ」については、紫色で描かれた影が
批判の対象となった旨の記述が複数ありましたので、そちらも参考にご紹介します。
1 『ルノワール その芸術と生涯』F.フォスカ/著 美術公論社 1986
p.81~93に「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」の章があり、記述は今回ご紹介した中で、
もっとも詳細です。
影についての記述はありませんが、「ルノワールはこの絵に自分のあらゆる実験の精髄を、
光と影の作用や色彩の研究の全成果を投入した」とあり、
p.73~79にかけては「陽光の中の裸婦」の色使い等について記載されています。
2 『色彩の芸術』ヨハナス・イッテン/著 美術出版社 1964
p.72~73で「ル・ムーラン・ド・ラ・ギャレットの部分”ジャンヌ”」を取り上げており
「この絵は全体として、明るいブルーと暗いブルー、グリーン、 少量のイエロー、
およびピンクで仕上げられている。(以下略)」
と色彩について触れています。
p.126には「反射は自然食を分解し、物体の形と色を多用な色片に分解する。(142図)。
反射作用の適例はルノアールの”ル・ムーラン・ド・ラ・ギャレット”でこの絵の細部は
挿絵Xに示したとおりである。」 ともあります。
3 『Renoir 世界の巨匠シリーズ』美術出版社 1964
p.48~49で「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を取り上げており、
「三角形になった前景の人物群は、シルエットと色彩とによって木のところの人物群に
結び付けられ、そしてこの後者の人物群は、 さらに黄色と金褐色の色調を通じて
垂直の一団の一部となり、(中略)他の側は、青とピンク色とが斑になった―
これは中間色の色価を取り入れないで、日光と影の感じを出すルノワール独特の
方法である―地面の上を通って、広場の中へ簡単に入っていける」
と色彩について触れています。
4 『現代世界美術全集 4 ルノワール』座右宝刊行会/編集制作 集英社 1969
「作家論―ルノワールの生涯と作品―」のp.92で「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」について
述べているほか、「作品解説」のp.118にも解説があります。
「木立の下で明るく輝く光を浴びて踊る男女の群れは、赤、黄、青の色となって、
あちらこちらにも散ったり結んだりして、豊かな色の舞台となっている」
5 『ルノワール 光と色彩の画家』賀川恭子/〔著〕 角川書店 2010
p.99~103に「この時期・この一点《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》」という解説があります。
ここでは色彩に触れていませんが、p.80~の第三回印象派展の「ぶらんこ」についての
記述には、
「女性の白いドレスには光が降り注ぎ、紫色の斑点を生み出している。
そのような紫色の影は地面全体に広がっている。このような表現は物議を醸した。」
とあります。
6 『もっと知りたいルノワール』島田紀夫/著 東京美術 2009
p.34~35「35歳 市民の楽しみ 生き生きと描き出される庶民の姿」で
「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を取り上げています。
ここでは色彩について触れていませんが、p.33の「陽光の中の裸婦」の解説
「酷評された裸婦」には、「「さて、ルノワール氏に次のことを説明してほしい。
(中略)紫色かがった緑色の斑点をともなう分解中の肉の塊ではないことを!」。
彼は少女の上半身に施された光と影の効果の表現を
彼女自身の肌の固有色だと誤解していたのである。」とあります。
7 『ルノワール 岩波世界の巨匠』岩波書店 1992
p.86~87で「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を取り上げています。
p.20に「ルノワールの《陽光の中の裸婦》は罵詈雑言の的となった。
「(中略)女のトルソというのは緑と紫の斑点の出た腐敗しつつある肉体の塊では
ないんだとね」」とあります。
8 『NHKオルセー美術館 2 印象派・光と色彩の讃歌』日本放送出版協会 1990
p.66~69で「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を取り上げています。
p.67の「ぶらんこ」の解説に「この時期ルノワールは木漏れ日がつくり出す華麗な色彩の
効果を追求していた。その成果は大画面「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」(→88)に
結実する」とあります。
9 『ルノワール』ゲハード・グルートロイ/著 日本経済新聞社 1996
p.29~の「第2回印象派展」の中で「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」
「陽光の中の裸婦」「ぶらんこ」について取り上げています。
10 『ファブリ版世界の美術印象派の巨匠たち 6 オーギュスト・ルノワール』
小学館 1975
p.29~30で「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を取り上げています。
「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」と同時期に「新鮮な小さいタッチを
点のように画面に並列」する手法を用いており、「木の間を通してモデルの顔や衣装の
上に転々と降り注いでくる金や白の太陽の光の斑点の効果」を見事に捕らえた
とあります。
11 『世界の素描 25 ルノワール』講談社 1977
図版8「「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」のための習作」に絵と簡単なコメントがあり、
p.28には油彩素描から完成までの簡単な解説があります。
12 『ルノワール アート・ライブラリー』ウィリアム・ゴーント/著 西村書店 1997
p.82~83で「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を取り上げています。
13 『ルノワール 陽とバラの肌』ガブリエレ・クレパルディ/著 昭文社 2007
p.48~49で「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を取り上げています。
14 『ルノワール 色の魔術師 別冊太陽』平凡社 2008
p.30~33で「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を取り上げています。
絵に数行のコメントがついたものです。p.121にも関連の記述があります。
15 『新潮美術文庫27 ルノワール』日本アート・センター/編 新潮社 1974
図16で「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を取り上げています。
絵に数行のコメントがついたものです。
16 『ファブリ世界名画集 30 ピエール・オーギュスト・ルノワール』 平凡社 1970
図版解説 Ⅵ―Ⅶに数行の解説があります。
17 『大橋巨泉の美術鑑賞ノート 4 印象派こんな見かたがあったのか』
大橋巨泉/著 ダイヤモンド社 2011
p.94に数行のコメントがあります。
18 『世界の名画 7 ルノワール』
井上靖,高階秀爾/編集 中央公論社 1993
p.88「8 ムーラン・ド・ラ・ギャレット」に解説があります。
19 『印象派の魅力 グレート・アーティスト別冊 11月20日号』
同朋舎出版 1990年11月20日号
p.133で「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を取り上げています。
絵に数行のコメントがついたものです。
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