残念ながら、お調べの図像(頭部に戈をのせた鳥)が誰を表すものかは分かりませんでした。
1 白川静の著作
白川氏の著作には、殷時代の金文や図象について触れている部分が多くあり、本文すべて
は確認が出来ません。目次や索引から、殷、王、鳥、戈などをキーワードに該当しそうな部分を
見てみましたが、お調べの図像(頭部に戈をのせた鳥)が誰を表すものか明記したものはみつけ
られませんでした。
(1)『白川静著作集 別巻 金文通釈続編殷文礼記』白川静/著 平凡社 2006
殷時代の図象と王朝について論じている資料です。
(3) 『白川静著作集 3 文字逍遥 文字遊心』白川静/著 平凡社 2000
p.67~「鳥の民俗学」の章に、お探しの図は具体例として掲載されていません。
(4) 『白川静著作集 4 甲骨文と殷史』白川静/著 平凡社 2000
p.372~「殷の基礎社会」の章の中で、殷周金文中に見られる図形文字標識につい
て述べていますが、お探しの図は具体例として掲載されていません。
2 それ以外の資料
中国史関連資料、金文関連資料、青銅器関連資料にあたりましたが、お調べの図象
(頭部に戈をのせた鳥)が誰を表すものか明記した資料はみつけられませんでした。
なお、殷時代の金文や図象について触れている資料は多く、本文すべてを確認はできないため、
目次や索引から、殷、王、鳥、戈などをキーワードに該当しそうな部分を見ました。
調査資料は次の通りです。
(1) 『金文の世界 殷周社会史』白川静/著 平凡社 1971
p.21~ 第一章 殷代の金文 図象標識の意味するもの
図象が氏族の表示に用いられるとの記載がありますが、お探しの図は
具体例として掲載されていません。
(2) 『呪の思想』 白川静・梅原猛/対談 平凡社 2002
p.62~ 殷の青銅器に刻された文字についての項で、「殷では文字以前に、それぞれの氏
族標識として鳥獣や社会的職能などを図象化したものを用いており、表象力が蓄積され
ていた。しかし、図象は、あくまで氏族のシンボルとしての「シルシ」であり、文字ではない。
ところが、西方から十二支などの知識が伝わり、外来の抽象概念を表現するという必要
が生じ、このことが文字を創り出す契機になったのではないか、と白川は指摘している。」
との記載があります。しかし、お探しの図は具体例として掲載されていません。
(3) 『殷周時代青銅器の研究 殷周青銅器総覧 1』
林巳奈夫/著 吉川弘文館 1984
当該の図(頭部に戈をのせた鳥)が掲載されている資料です。図版の巻、p.252にも
この図象があります。同シリーズ2巻『殷周時代青銅器紋様の研究』の鳥の項も
見ましたが、この図が誰を意味するかという記載はありませんでした。
(4) 『甲骨金文辞典 下巻』 水上静夫/編著 雄山閣出版 1995
p.1496~7
「鳶」の古体漢字である金文として、当該の図(頭部に戈をのせた鳥)が掲載されています
が、解説文にその図が誰を意味するかという記載はありません。
『字統』(白川静/著 平凡社 2004)や
『字通』(白川静/著平凡社 1996)など、漢和辞典で「鳶」の項目を見ましたが、
当該の図が誰を意味するかという記載はありません。
(5)『中国美術全集 工芸編 4』 京都書院 1996
p.14下段 「殷墟期の青銅器は非常に多くのものに銘文がある。銘文は数文字の簡潔
なものが最も多く、示されているのは一般に氏族・作器者名・祭祀の対象などである。な
かでも氏族銘はかなり図案化して書かれ、美的効果を追求している。そのため、一部の
学者に中国最古の文字と誤認されることになった。」とありますが、どの図案がどの氏族
銘かの例示はありません。
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