結論から申し上げますと、お書きいただいたあらすじそのものの物語は発見できませんでした。
キーワードの「鬼」「悪魔」「花嫁」「洗濯(洗濯女)」といった言葉で『グリム童話を読む事典』『ガイドブック世界の民話』などから索引をひき、各作品にあたってみましたが、見当たりませんでした。(ちなみに、洗濯女はフランスの民話ではしばしば援助者として登場します)
異類婚姻譚ということですが、グリム童話の異類婚姻譚は主に魔法で怪物(動物の場合も多い)にされた人間で最後は魔法が解けて大団円というパターンが主。この場合、怪物のもとへ戻ります。
日本の昔話の場合、酒呑童子などの話で鬼が娘をさらいますが、この場合の鬼や蛇婿入りの蛇等は退治されて終わります。(「鬼の子小綱」鬼にさらわれた娘と爺が再会。娘には小綱という鬼の子がいて、3人で逃げ出す。鬼と人間の子供の小綱は結局人間とは一緒に住めないと入水など自殺する。途中までは似たあらすじですが、とどまらず逃げるので、お探しのものとは違うかと思われます)
『日本昔話通観 28:昔話タイプ・インデックス』(稲田浩二/著 同朋舎出版 1988.9)によると、異類婿や妻女奪還のタイプでは基本的には鬼や蛇、サルなどは退治され、娘は家に戻るパターンです。
グリムということで次のものにあたりましたが、『世界の民話 25:解説編』(小沢俊夫/編 ぎょうせい 1979)の”索引Ⅰ アールネ=トムソン「昔話の型」による索引”の「美人と野獣」の項のグリム童話「歌ってはねるひばり」「鉄のストーブ」はお探しのものではありませんでした。
確認できた類話と調査した資料をいくつか下記に挙げておきます。
【グリム童話および外国の昔話】
『1812初版グリム童話(小学館文庫)』上・下(グリム兄弟/著 乾侑美子/訳 小学館 2000.6)国際児童文学館請求記号【T000601/11/1~2】
下巻収録「夏の庭と冬の庭の話」初版にのみ載録。第2版以降は「歌って跳ねるヒバリ」の注に入れられた。「美女と野獣」と同パターン。約束に従って、獣が娘をさらいにくる。娘は父のために一度戻り、獣の元へも自分の意志で戻る。獣は王子に戻る。
『初版以前グリム・メルヘン集』(ヤコブ・グリム,ヴィルヘルム・グリム/採話 フローチャ―美和子/訳 東洋書林 2001.11)大阪府立中央図書館請求記号【943/253N/グリ】国際児童文学館請求記号【T011112/1】
「エーレンベルク稿31 年老いた魔女」p94-101
婿として、着飾った中身のない王子でなく、かしこい小人を選ぶ。小人は魔法をかけられた王子だった。
『封印されたグリム童話』(フローチャ―美和子/訳著 2004.7 三修社)大阪府立中央図書館請求記号【943/574N/グリ】国際児童文学館請求記号【T040715/21】
該当の作品なし
『初版グリム童話集』全4巻(吉原高志・吉原素子/訳 1997 白水社)大阪府立中央図書館請求記号【943/155N/グリ】国際児童文学館請求記号【N970515/7-1~4】
1 なし
2 「夏の庭と冬の庭」
3 なし
4 なし
『悪魔の本(世界の民話館:8)』(ルース・マニング=サンダーズ/著 西本鶏介/訳 TBSブリタニカ)大阪府立中央図書館請求記号【908/89N/8】国際児童文学館請求記号【N800605/1-8】(復刊はブッキングより発行)
該当作品は見当たらず
『怪物の本(世界の民話館:9)』(ルース・マニング=サンダーズ/著 西本鶏介/訳 TBSブリタニカ)国際児童文学館請求記号【N800605/1-9】(復刊はブッキングより発行、大阪府立中央図書館請求記号【J908/261N】)
「銅のひたいを持つ怪物」こどもをさらって一緒に暮らすが、子どもたちは動物の助けで逃げ出す。子どものうち、女の子は寂しがる怪物がかわいそうで、戻って怪物と暮らすことを選ぶ。
「歌う木の葉」美女と野獣のパターン。怪物のもとへ自ら戻り、愛を告白。怪物は魔法が解けて王子(皇帝)に戻る。
『巨人の本(世界の民話館:5)』(ルース・マニング=サンダーズ/著 西本鶏介/訳 TBSブリタニカ)大阪府立中央図書館請求記号【J/3397】国際児童文学館請求記号【N800605/1-5】(復刊はブッキングより発行)
該当作品は見当たらず
『アンドルー・ラング世界童話集』全12巻(アンドルー・ラング/編 西村醇子/監修 東京創元社 2008~2009)
1 あおいろの童話集 該当作品なし 大阪府立中央図書館請求記号【J908/361N/1】
2 あかいろの童話集 該当作品なし 大阪府立中央図書館請求記号【J908/361N/2】
3 みどりいろの童話集 該当作品なし 大阪府立中央図書館請求記号【J908/361N/3】
4 きいろの童話集 該当作品なし 大阪府立中央図書館請求記号【J908/361N/4】
5 ももいろの童話集 該当作品なし 大阪府立中央図書館請求記号【J908/361N/5】
6 はいいろの童話集 該当作品なし 大阪府立中央図書館請求記号【J908/361N/6】
7 むらさきいろの童話集 該当作品なし 大阪府立中央図書館請求記号【J908/361N/7】
8 べにいろの童話集 該当作品なし 大阪府立中央図書館請求記号【J908/361N/8】
9 ちゃいろの童話集 該当作品なし 大阪府立中央図書館請求記号【J908/361N/9】
10 だいだいいろの童話集 該当作品なし 大阪府立中央図書館請求記号【J908/361N/10】
11 くさいろの童話集 該当作品なし 大阪府立中央図書館請求記号【J908/361N/11】
12 ふじいろの童話集 該当作品なし 大阪府立中央図書館請求記号【J908/361N/12】
【日本の昔話】
『鬼と姫君物語:お伽草子より』(大岡信/著 1979.2 平凡社) 大阪府立中央図書館請求記号【J/7187】
「酒呑童子」鬼が年ごろの娘をさらう。源頼光たちが退治に向かう途中、血まみれの着物を洗う娘に出会う。彼女他数人がとらわれている現状を訴え、退治を願う。無事退治後、血をしぼられたばかりの中納言の姫は両親に死んだものとして伝えてほしいと告げる。頼光は迎えに来るからと説得する。← 残るというより帰れないというニュアンス
【創作絵本】
『ゼラルダと人食い鬼』(トミー・ウンゲラー/さく たむらりゅういち・あそうくみ/やく 1977.9 評論社)大阪府立中央図書館請求記号【E2/144N/ウ】
こどもをさらって食べる人食い鬼が腹ペコで倒れる時に出会ったゼラルダは鬼に料理をふるまう。鬼は料理がおいしくて、こどもをさらうことを忘れる。→鬼のところへ自ら行くというシチュエーション。
「洗濯」というキーワードでは、森の中へ逃げた(行き着いた)娘(姫)が小屋に置いてもらうために、洗濯等家事をするパターンがある
→「十二人兄弟」(森に隠れた12人の兄の服を洗濯することから兄の存在に気づき、森へ行き、兄たちと暮らし、呪いをとく)「白雪姫」など
大阪府立中央図書館国際児童文学館と同こども資料室で調査しました。大阪府立中央図書館所蔵のものは貸出できます。
参考資料:『グリム童話を読む事典』(高木昌史/著 三交社 2002.2 ),
参考資料:『ガイドブック世界の民話』(日本民話の会/編 講談社 1988.8 ),
参考資料:『日本昔話通観 28:昔話タイプ・インデックス』(稲田浩二/著 同朋舎出版 1988.9),
参考資料:『世界の民話 25:解説編』(小沢俊夫/編 ぎょうせい 1979 ),
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